天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

72 欲望の世界を超えて 赤堀芳和

 この人の本はずっと読ませてもらっている。


過去に読んだ本;
「理性は泣いている」
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20160618#1466264448
「我を超えること」
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20160120#1453293947
「共生の『くに』を目指して」
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20151231#1451564653
 今回「”やすらぎ”の国はいずこに」というサブタイトルがつけられたこの本、以前の本もそうだったが社会学的な論述を示唆しているようで、思索的な内容が深く掘り下げられている。
 トーマス・マンの「魔の山」、夏目漱石の「草枕」を追求する中で、ショーペンハウエルニーチェ、ドイツロマン主義が紹介されている。これらの本をじっくり読んでみようと思いつつ、果たせないでいる。二胡の練習のプライオリティが高いせいか。それはそれでいいとして、この本は今年の春に出版されてすぐに注文したが、前半は思索的な内容であったため、ゆっくり読むかという気持ちで他事の合間に読んでいたが、後半はきっちりと現在の社会情勢に言及されている。
 かつてのドイツで、ナチズムが台頭した経緯や背景を説明して、現代の情勢を危惧している。特に日本。安倍政権のやりかたは、当時のナチのやり方をお手本にしているのではないかというようなことまで。
 FaceBookなどのSNSサイトでは、アベをヒトラーに準える記述が随分前から流れている。これは、赤堀さんのように冷静に歴史も観察する人が同じことを書かれているということは、単なる皮肉ではなく放置しておくと、実際にナチのような独裁権限がますます横暴さを増してくる。
 夏目漱石草枕のような思索をし、小泉八雲が惚れるような日本人なら、このようなことは我々の理性で回避できるだろうと、希望をつなげるように書かれているが、この本が書かれた後のこの前の選挙。自公の議席をわずかに減らしたものの、安倍の横暴を許すような結果と言わざるを得ない。
 これを受けて、自民党内でも安倍が増長しないようにと警告を発する声もあり、元首相経験者も安倍批判をしている。しかし明らかに増長している。国民の税金を勝手に使って米国にゴマをすっている。
 今回始まる特別国会も、野党の強い要請で会期を短縮することはしないが、野党の質問時間を少なくしてしまおうとしている。これでは国会論議の何の意味もなくなる。自民党の石橋氏もこれは「フェアじゃない」と良識ある発言をしている。安倍があまりにも常軌を逸しているので、石橋氏がまともに見えてくる。
 赤堀氏は夏目漱石を取り上げて、日本人の良さを書かれるが、一方で永井荷風的に言えば、事なかれ主義、長いものには巻かれろという人間の方が圧倒的に多いのだろうか。今回の選挙結果からはそのように見えてしまう。
 しかし、立憲民主党として結集したリベラル派の政治家にかなりの票が入ったことに希望をつなぐことができるかもしれない。リベラルとはヒューマニズムに基づいて行動することであり、自己中心主義を捨てれば誰もが受け入れられるはずのものだと思う。欧州に比べると、まだまだ日本人の民度が低い。
 「最後は金目でしょ」と話すような麻生が安倍を増長させてる間は、政治家のレベルそのものが低く、危ない。
 本の紹介を書くつもりが、つい。しかし著作としては露骨な表現は避けて、歴史的社会的背景を説明してくれる赤堀氏の思いは同じ事だろう。