天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

反貧困 湯浅 誠

 おのれの体調について、様子が分かってきたからには、ほかのこと、市民としてできることは続けてゆきたい。

 この本に堤未果さんの「ルポ貧困大国アメリカ」が言及されているが、これは以前読んで紹介している。
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20130901#1378046953
 湯浅氏と堤さんの対談「正社員が没落する」も読んだっけ。
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20130924#1380033108
 このときに湯浅氏が立ち上げて活動している「もやい」の存在を知った。
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20130923
 宇都宮さんの同じタイトルの本もある。
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20160111#1452512037
 宇都宮健児さんと湯浅さんは「反貧困ネットワーク」というサイトを立ち上げて連携している。
http://antipoverty-network.org/
 貧困の問題は海の向こうのアメリカの問題だけじゃない。この本では日本の現状と、湯浅氏の取り組みをレポートし、政府とお役所に警鐘を鳴らしている。
 貧困の問題は、収入の少ない人が気の毒だからとか、かわいそうという問題ではない。もちろんそういう気持ちが問題に取り組むきっかけにはなっているが、日本でホームレスやネットカフェ暮らしをせざるをえない人たちが増えていることがおかしい。
 テレビのニュースで、児童虐待や家族殺しという悲惨な報道が多い。そういう報道をしているテレビ局は何のために存在しているのか。その出来事の原因に貧困の問題があることをどうして指摘できないのか。
 この日本で、餓死する人がいる。生活保護法というのがありながら、いざ申請に行くと窓口で断られることがあるとか。どうにも困った人が「もやい」に相談に行き、もやいメンバーが申請に同行すると申請できてしまうらしい。お役所(福祉事務所)は増える費用を抑えるために弱い人を切り捨てる。
 自助努力とか自己責任とかは、頑張ればなんとかなる環境にいる人に通用する言葉だ。例えば貧困家庭に生まれて満足に学校にも行けなった上に、家族がいないとなると自立できるだけの生活費を得られる仕事に就くことが困難になる。こういうのを貧困スパイラルというが、これはもう自己責任論が通用するレベルではない。
 貧困ビジネスというのもある。お金に困っている人をダジにして儲けようとする。ある意味で詐欺よりたちが悪い。
 この本ではそういった実情を赤裸々に示しながら、湯浅さんたちが取り組む活動を紹介している。本来、行政が行うべきことを有志で行っている。行政機関はしょせん予算消化団体でしかない。真面目に問題に取り組む人もいないわけではない。しかし、こういう民間の、市民の活動は行政を正常化させるために大いに機能する大切な活動だ。
 多くの人にこの視点からの問題意識を共有してもらいたい。
 原発事故を放っておいて再稼働したり、外国に原発を輸出したり、報道機関を委縮させるような規制をかけたり、はたまた共謀罪などという罪を作って反政府グループの監視をしようとするなど、何のための誰のための政治なのか。
 氏によれば、日本は貧困への取り組みが遅れている。実態すら把握しようとしていない。多くの国では「貧困と戦争」はセットで考えられている。憲法9条(戦争放棄)と憲法25条(生存権保障)をセットで考えるときに来ているとされている。
 問われているのは”国の形”だと。