以前「コスタリカの軌跡」という映画を見に行ったときにもらったブックレットで、こういう本があることを知った。その時の記述がこれ。
白井聡という学者に感心したので、ちゃんと著作をやんでみようと思って文庫本で読んだ。文庫になる前に出版されていたもので、文庫化にあたり補足もされている。
著者についての感想は記述のページに任せ、この本について少し書いておきたい。
表紙に「日本人の必読書!」とある。まさにそう。少し前にノーテンキな日本人として言葉足らずの文章をアップしたが、まさにそのノーテンキさはどこから来るのかを解説してくれているともいえる。
学者の書く文章なので、きっちり理解するにはハードな個所もある。しかし、今の日本がどうしてこうなったのかについて、分かりやすく記述がされている。
そして何よりいいのは、学者然として分析して終わり、というのではなく、ではどうしたらいいのか、と言うことについて結んでいることだ。
「永続敗戦」とはどういうことか。敗戦時の状態が今なお続いており、このままでは更にずっと続くということ。
「敗戦時の状態」というのはどういうことか。簡潔に言えば、対米従属状態であること。米軍の占領が終わっても、米国の家来のようなふるまいを政権が続けているということだ。
沖縄の米軍基地の問題にしても、原発の問題もすべて米国にすり寄って利権を維持しようとする政権や高級官僚、産業界が、自分たちだけの目先の利益のために現在の状況を維持しようとしていることから起きている問題だ。
何が問題かというと、上記の利権維持グループとそのおこぼれに与かろうとする人間たち以外の国民を犠牲にしているということだ。
日本の社会がおかしくなってきていることの根本原因はすべてそこにあると思う。
即ち、ニートが多いとか、家庭内暴力とか、子供の貧困などすべてがそう。子供の貧困などと言うが、子供だけ貧困なんてことはないので、貧困な家庭が増えていることで子供があおりを食らっているのだ。即ち格差の拡大が問題と言ってもいい。
「1億総中流化」などという時代は、もはや古き良き時代になってしまった。
無論そういうことが問題と気づいて、売国奴を排除しようと声をあげている人たちもいる。
この本では、何故こんなになっているのか。ということを歴史的事実を踏まえて分析している。
曰く、日本は市民革命を経験していない。第二次世界大戦の戦争責任が整理されていない。そのことから数々の問題が惹起されているのに、多くの日本人はそのことに考え及ばない。
白井氏は、「真っ当な声」を一人でも多くの人があげなければならない、という思いに駆られてこの本の執筆にとりくんだ、そうだ。
3月で東京新聞のコラムを終わってしまった山口二郎氏は、「民主主義の運動は永久運動だ」という言葉を最後に記した。
そして白井氏はガンジーの次の言葉で結んでいる。
「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変える為ではなく、世界によって自分が変えられないためである。」
周りのおかしな空気に妥協したり、無関心でいたりしないで、声を上げ続けよう。それが民主主義の社会ってこと。
この本で知らされたこと、確認したこと、共感したことなどがいっぱい。もっと言わねばならないことがたくさんある。折に触れて、本書の記載に関連したことを書くとするかな。