天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

理性は泣いている 赤堀芳和

 これは、以前、赤堀さんの本を読んでからもっとこの人の書いたものを読んでみたくて買った3冊目。
最初は「共生の『くに』をめざして」という本。「共生」というキーワードに引っかかって読んだ。たしか新聞の書籍広告に出ていたが、たまたま今日の朝日新聞にまた出ていた。

http://goo.gl/l7ExIl
その次が「我を超えること」。
http://goo.gl/5eeqvU
そしてこの「理性は泣いている」という本。
 まずもって、以前の感想と重複するかもしれないが、この人の経歴がもと大手メーカーのサラリーマンで、退職後「自由人として生きる」というところがいい。もう肩書はいらない、思ったまま、感じたままを世間に伝えることをしている。というスタンスがいい。
 ところで出版社だが、「共生」の本は講談社エディトリアル、次が講談社ビジネスパートナーズ、そして今回の本は講談社出版サービスセンターとある。いずれも講談社自費出版取扱会社だ。ということは赤堀さんはこれらをすべて自費出版で出しているってことか。ワシみたいなのが買うから少しはモトが取れただろうか。内容からして、売って儲けるための本ではなく、自らの筆で世の中を少しでも啓蒙したいとの思いから自由に書いて出したのだろう。自称自由人だから。自由にしていられることは恵まれていると思う。ワシももうすぐ自由になるぞ。
 それにしても、同じ講談社系列なのに同じ会社で出版しないで、都度別の会社になっているのはどういうわけだろう。
 ちなみに書かれた順番は「共生」が最も新しく、そのひとつ前が「我を超える」。そして今回のは中で最も古く、2008年9月出版。平成18年退職とあるので、退職後初めて出した本と思われる。
 で、この本は何が書いてあるかというと、副題に「日本的リベラル思想の提言」とあるが、これは夏目漱石の思想であることが読むとわかる。帯の「武士道だけで日本が、若者が救われますか」というのは、「軍事力に頼る政策で日本の将来があるのか」という問いかけに他ならない。8年ほど前の本であるが、今の安倍政権のやっていることはまずいぞと言っている。
 150ページほどの本だが、結構読むのに骨がおれた。何となれば、最初がマルクスの引用で、次に仏陀の引用。そして夏目漱石で結んであるといった構成。要するに、社会主義の国家のあり方については、過去、歴史的に中国、ソ連などの大きな国が試行錯誤してきたが、マルクス主義に代表される、理性的な理念を形だけ取り入れることはむつかしい。人間の心根の中には、欲の部分がどうしても抜けきれない。それが形を追い求めた社会主義政策の盲点だったのだろう。
 そんな中でも皆で平等に幸せを追求しようとする動きが北欧の国々にある。しかし、日本にも夏目漱石などは極めてリベラルな思考をしていたが、当時の大勢とは合わず日本を嘆いていたという。
 世界の流れは、ソ連の崩壊により社会主義でなく資本主義が正当であるかのように見えたが、新自由主義の下での格差が拡大してしまった。
 氏は、この本から北欧の国々に学ぶべきものがあることを書いている。イデオロギーとは無関係にきわめて社会主義的な民主国家を実現している。日本は単なるまねではなく、日本的な思考での民主国家の実現があるだろうというのが氏の一貫した主張のようだ。民主主義に「日本的」というものがあるかどうか、そこのところはよくわからない。