天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

タリバン復権の真実 他

 少し前に本屋で立ち読みをして、最後まで読みたくなって購入。

 アフガニスタンから米国が撤退して、タリバン政権が復活した。メディアでは、タリバンが悪者のように報道しているが、アフガニスタンで貢献されていた中村哲さんはタリバンのことは、素朴なイスラム教徒のように書いていた。

 著者の中田考氏は、同志社大学の神学部教授をしていた。同志社大学と言えばキリスト教だが今はイスラム教徒でもあるらしい。その人がタリバンの面々と直接交流をもっていて実情を書いたのがこの本。

 今のアフガニスタンの実情から言うと、タリバンの政権は人々に受け入れられている。それでなくては無血革命にようなことにはならない。もともと米国がやらせ911をきっかけに「テロとの戦い」という名目でアフガニスタンに侵攻した。

 タリバンはもともとイスラム神学生の集団で、文字通りのイスラム法典に則った国しか認めない集団というだけ。彼らを排除しようという勢力に対しては武器をもって戦うが、必要以上に人々を攻撃することはない。

 20年間の米国の侵攻は、傀儡政権による支配があっただけで、アフガニスタンへの支援などはみな国際機関や政権が使ってしまって、困っている人々には届かなかった。そもそも大きな機関が集める寄付金は、その組織自体の運営費に消えるのがほとんどで、支援目的のところへは届かない。アフガニスタンもしかりだった。

 米軍が引き上げるときに、空港に押し寄せたアフガン人は傀儡政権の手下で米軍の使い走りをしていたものが置いて行かれないように集まった。しかし米軍は置き去りにしていった。

 メディアでよく言われる女性の権利を認めないという問題は、事実とは違っている。女子教育もイスラム法に従って平等に行うのがタリバンの主張だが、女子のための設備を用意するまでの資金がまだ回らないというのが実際らしい。

 タリバングループは、日本にも来ている。京都で会議をしたり広島を見学に行ったりしている。著者の中田氏あってのことだろう。よき理解者として認められている。中村哲さんもそういう風に扱われていたはず。

 この本の「タリバンの組織と政治思想」という章を読むと、彼らはキリスト教だけでなく共産主義や民主主義、自由主義も現代の無名な宗教として受け入れない。米国の前に共産主義国だったソ連が侵攻していた経緯があり、こういうことになるのだろう。ただひたすらにイスラム聖法に従って政治を行うと、権力者が儲かるような不正もあり得ない。皆神の前に平等に扱われるという文字通りの政治が行われる。

 イスラム教徒の世界には、一般にスンニー派シーア派などと言われるように、イスラムの戒律にゆるく従おうとするグループがあるが、タリバンは教義の解釈に妥協をしない。しかし、アフガニスタンに攻め入ることをしない限り、他国や他のグループを攻撃することはない。侵略者を排除する戦いがジハードと言われる。米国のビルに飛行機で突っ込むなどという行為はジハードではない。

 戦後の日本に生まれて育った私たちは、民主主義が政治の基本であたりまえだと思っている。それを実現するには選挙制度が健全でなくてはならない。金権政治世襲のバカ議員が当たり前のように権力者然としていることを排除しなくては、という問題意識が大きい。

 しかしこうしてみると、国民主権という理念ではない政治としてムスリムの世界があることを認識する。イスラムがテロリストだと言ったバカブッシュに世界は惑わされていた。というか日本だけか、米国追随路線で今も軍拡をやっている。

 主義主張が違っても、共存・共生してゆく世界にはこのイスラム世界をちゃんと認識して共生してゆく必要がある。

 そうするとその国から排除される人々が難民と言うことになる。ウクライナは今、ロシアからの武力で難民になっている人が500万人以上。政府自民党はここへの支援をうたって選挙対策をしているが、ミャンマーアフガニスタンイラクなどの難民、さらにはロシアから逃げ出している若者がいる。こうした人たちを皆受け入れる国になってほしい。アジア人の研修生を奴隷のように扱うのはやめたらどうか。