天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

東亜全曲の動揺、と阿炳(アービン)が奔る

 もう6月なんだ。暑くなると夏男の自分は体調がよくなる。ということで、まずは読み終えた本二冊の紹介。

 1冊目の本は、松岡洋右の書いたもので表紙のように「東亜全曲の動揺」として我が国是と日支露の関係・満蒙の現状と書いてある。昭和6年に出た本を現代版として再販しているものらしい。ネットの宣伝にウマウマと引っかかって500円で購入。

 この出版社は右翼なのか。なんでも500円で売るみたい。500円ならダメもとでいいかという値段。近代史を知る以上必読のようなことを言っていたが、読んでみるとこの著者、A級戦犯の松岡が当時書いたもの。満州を巡る出来事の今になっては細かなことがかかれているが、全体を通して当時外相だった幣原氏のやり方に難癖をつける記述に終始している。A級戦犯の書いたものをありがたがるのは右翼。右翼の考え方が少しは分かるかと思ったが、この本からは結局何がいいたいのかよくわからなかった。

 

 さて2冊目。この阿炳(アービン)というのは、二胡をたしなむ人ならだれでも知っている。二泉映月という有名な二胡曲の作者であり奏者。

 アービンは、眼の悪い二胡弾きで琵琶と二胡を担いで弾き語りをしていたというところまでは聞いていた。中国で求めた本で、彼の父親は道士だったところまで確認した。

 この本によると、アービン自身道士であったらしい。もともと左目が悪かったのが、乱闘に巻き込まれたときに右目を負傷してそちらも見えなくなったとか。そこで彼はこんな写真が出回っている。

 1893年生まれで、1950年が没年。wikipediaによると、父が道士ではあったが正妻の子供ではなかったらしい。

 ともかく、この本では彼が主人公で、日中戦争開始直前の上海や無錫の様子がどんなだったかよくわかる。ちょうど、上記の松岡らが中国のことを上から目線で見ていた時期に、外国人が租界を作って住んでいた上海で中国人が、共産党、国民党、青帮といわれる黒世界のボスたちが暗躍する。どの勢力も、資金を得るためにアヘンを取り扱う。組織の中には、腐った部分が必ずあるものということだ。

 そういう世界の中でアービンは、庶民のために自分が出来ることをしようとする。結局目が見えなくなってからは、二胡と琵琶の弾き語りで世の中を風刺する。彼の音楽的才能はあったが、譜面に残すことが出来ず。録音を後世の人が譜面にしたものが残っている。「二泉映月」はその代表的な曲。

 著者は日本人で、物語はフィクションと言うことだが、青帮の杜月笙は実在の人物。二胡をかき鳴らして国を憂えた生きざまは物語がフィクションといえどもその通りだったろう。ということで、自分の二胡も仲間との楽しみと世の中に何か訴えかける響きになるように頑張ろうか、という気にさせられた