怒羅権と私 汪楠
一昨日、神田の岩波ホールで映画の券を買ってから時間つぶしにランチの後で、久しぶりにすずらん通りの書店東京堂を覗いてみた。あったら買いたい本を探してみた。店内据え付けのパソコンで有無が分かるようになっている。が、無かった。
探していたのは「ゲーム・ネットの世界から離れられない子供たち」というタイトルで、アマゾンばかりに儲けさせないで、本屋さんに有ったら読んでみるか程度の本。無論孫達の行く末を心配してのこと。
せっかく来たので、新聞広告に載ってないけど面白そうな新刊本は無いかと少しうろついて目にとまったのがこの本。本は買わない主義になった自分ではあるが、鮮度の必要なものとか、買うことが支援につながると思う場合は別。
怒羅権(ドラゴン)とは何か。中国残留孤児の帰国2世が、日本でのいじめに対抗すべく集まった団体。著者の汪楠は日本人の血は混じっていない中国人。知識階級の父が中国残留婦人を再婚相手としたため、日本に来ることになった。中学生の頃だ。
言葉の問題や、貧困を理由にいじめを受ける。怒羅権は、同じ境遇の仲間がいじめを受けると、いじめた相手を二度と仕返しもできないくらい徹底的にやっつける。自衛的暴力集団だった。それがいつの間にか犯罪集団となりヤクザとも関係を持つようになった。
非行の限りを尽くした汪楠は、懲役13年の刑に服す。どんな犯罪を犯したのか、刑務所がどんなところか、有態に書かれている。刑務所はとても更生させるにふさわしいところではないらしい。刑務官自身がそれを認めている。
彼が更生するきっかけとなったのは、石井小夜子弁護士との出会いだった。えらい弁護士さんがいたもんだ。この方はこんな本を書かれている。
汪楠氏は、13年の服役を終えて今は逃げも隠れもしない。本の表紙にバーンと顔出しして、中国残留孤児帰国者二世の実情を語る人となった。また刑務所の受刑者を見ていて、彼らに必要なものは何かと考えた末、「ほんにかえるプロジェクト」というボランティア団体を立ち上げた。受刑者の希望する本を提供する活動だそうだ。
とても聡明な人だと思う。犯罪など社会をおかしくする行動は、無知から来る。知性のなさが社会を悪くする。反知性主義の政治家が横行する日本は、この人からよくよく学ぶ必要があるだろう。
犬も歩けば棒にあたる。たまに神田の本や街を歩くのもいい。