天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

戦争はなぜ起こるか 佐藤忠男

 今日は敗戦から75周年。すなわち、75歳以下の人は戦争を体験しないで育った。

 平和が長く続いている。と言える。ただし日本では、ということで海外では日本が太平洋戦争で負けた後も戦争が起きている。朝鮮戦争ベトナム戦争イラク戦争、アフガン侵攻等々。

f:id:mm3493:20200815164220p:plain

 さてこの本は、先の戸田清氏が推薦されていた25冊の本の最初。入門用とされていた本。読んでみて確かに入門編だと感じた。

 入門すなわちこれから歴史や人間学などを勉強しようという人にはピッタリ。中高生が読むといい。無論我々おっさんたちには、今まで知るところとなった出来事が、どうしてそういうことになったのかを整理してくれるという意味でとても貴重な本だと思う。

 著者の佐藤忠男さん、私は映画に詳しくないので存じ上げなかったが、本職は映画評論家。どこの学者だろうと思っていたら、学者ではなかった。いわゆる学級の徒ではない。自分の興味の赴くままに勉強して、考えを学者用語ではなく平易な言葉で語りかけてくる。例によってもくじを紹介しよう。

1、戦争の原因を考えよう

2、太平洋戦争はなぜ起こったか

3、日中戦争はなぜ起こったか

4、国と国のつき合い方

5、軍人は戦争を辞められない

6、第二次世界大戦はなぜ起こったか

7、アメリカとソビエトの対立

8、助け合おう

9、宗教と戦争

10、人口の増加は戦争になるか

11、戦争は人間の本能か

12、平和のための勉強

13、私たちの進むべき道

 1から7までが歴史の考察になっていて、8以降が戦争の原因を考え、どうしてゆくのがいいのか考える。

 どんな書きぶりか。3の「日中戦争はなぜ起こったか」の章の「軍人をおさえられなった政治家たち」という記述の中では、こんな具合に書かれている。

 「明治のはじめから太平洋戦争の敗戦まで、日本の軍隊は天皇の軍隊であるということになっていた。そして、天皇の軍隊は間違った戦争をするわけがない、ということになっていた。軍隊の行動を批判すると、天皇を批判するのか、と逆ねじを食わされることになった。だから、ほんとうはあまり戦争をしたくない政治家たちも、そのほんとうの気持ちを国民にうちあけず、表面では日本軍のやっている戦争は正義の戦争であると言った。そんな調子では軍をおさえることなどできるものではなかった。」

 この流れでは、戦争の責任が天皇にこそあったことが浮かび上がる。戦争終結についても前回確認したように、1945年2月時点で近衛首相が天皇に勝ち目のない戦争を終わらせるように上申したにもかかわらず、天皇は聞き入れなかった。

 その結果、広島と長崎の原爆投下に至った。降伏時期を延ばしたことで、アメリカがどうしても落としたかった原爆を落とす余地を残した。延ばした理由が「国体の護持」すなわち天皇制の維持。敗戦直後マッカーサーのところに昭和天皇が単身でかけて「国体の護持」についての取引をした。何を語ったのか。その結果できたのが「象徴天皇」という政治的に全く意味のない制度。これが憲法上に記された。

 話を本にもどすと、著者の佐藤氏は破滅に突き進んだ日本の軍部に対して、その後の冷戦で自由主義陣営に勝てない破綻したソヴィエト連邦が、戦争という危機を回避して共産主義を捨てたことを評価している。自ら反省できる知性を持っている点を評価している。

 本が出たのは2011年11月。911も起きた直後なので、そのごのアメリカについては詳しくは記載がない。首謀者を決めつけて、その命を狙うために一般市民を巻き込んだ空爆を繰り返す行為は、ベトナム戦争の反省がない。

 第2次大戦は、もてる国々に対して待たざる国が自分たちの利権拡大を求めて戦争をした。持たざる国の指導者はヒトラームッソリーニ、そして天皇を担いだ軍部という独裁体制の国家だった。ファシズムに対する民主主義の勝利という見方もできる。

 その結果日本も民主主義国家の仲間入りをした。であるのに、今は独裁政権と言えるほどの様相を呈している。これに対して、著者はこのようにいう。

 「これらのこと(戦争が起きないようにすること)をどう解決したらいいか、それを考えることを、政治家や学者にだけ任せておくわけにはいかない。なぜなら、民主主義の社会では政治家は国民によってえらばれるのであるから、そういう問題をまじめに考える習慣を持たない国民が、そういう問題をまじめに考える政治家を選ぶことはできないからである。国民の多数がもし、自分の国さえ得をすれば弱い小さい国などどうなってもかまわないとしか考えず、そういう考えを反省する習慣を持っていなかったら、やはり同じような考え方の政治家しか選挙で選ばれず、外国との関係など決してうまくゆかないだろう。」この文章、トランプに読ませたい。

 そうまさに今のアメリカのトランプ政権は、自国主義に走って政権を握った。しかし今や経済はグローバル化の時代。他国を排除することでは国内もうまくいかないことを知るくらいの知性がないと。

 ともかく戦争が起きると犠牲になるのは弱い立場の者。一つの例は、戦場に行く兵隊は兵隊にならざるを得ない人たち。洗脳された人間はべつ。簡単に洗脳されるのは知性の問題。

 ところで今日、靖国神社に4人の閣僚が参拝したらしい。今の日本がどういうポジションなのか、少し考えればそんな軽はずみな行動は出来ないはず。これまさに知性の問題。