天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

人はなぜ戦争をするのか 戸田清

 8月のこの時期に読むのにはいい本だったかもしれない。

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 以前、同じタイトルのアインスタインとフロイトの本を読んだ。

あれは昨年末だった。

https://mm3493.hatenablog.com/entry/2019/12/29/162441?_ga=2.19078269.471155438.1597052174-1220956125.1581672389

 その時に買い求めたもので、法律文化社の出版なので何か法律の専門書のような学術的なものかと思い、しばらく寝かせていた。が、今の時代に読むべき内容だった。

 66ページと短めのものだが、戦争を考えるうえで読むべき25冊の本が紹介されているし、内容は深いものがあった。目次で紹介したい。

 

はじめに

1 人類史のなかの戦争

2 戦争の社会構造的要因

3 暴力の生物学的背景

4 原爆はなぜ投下されたか

5 集団的自衛権で増大する戦争協力のリスク

6 人類の将来

7 平和教育の5つの柱

・戦争の原因を考える平和教育のための25点の必読書

・参考文献

あとがき

 

 1の人類史の中の戦争では、長い人類の歴史の中で人が戦争をするようになったのは最近のことだそう。すなわち人がチンパンジーと分岐してあら700万年。25種類くらいの人類があったそうだが、生き残ったのはホモ・サピエンス。初めてアフリカに現れて20万年。これが世界に広がって数万年。そして世界で戦争が始まったのが8000年前。日本では2000年前から戦争が始まったのだそう。

 ここで戦争の定義が必要になる。戦争の前にも、殺人や暴力はあった。しかし「戦争」は組織的に、従属したものらが兵隊として戦う。すなわち、持てる者と持たざる者との格差が生じる社会。著者は次の点を戦争に至る社会的構造要因とみる

1)人口増加

2)一人当たりの資源消費の増大

3)階級格差の増大

4)技術の発達

5)戦争や暴力を正当化しうるイデオロギー

 ここで国家の暴力行為として、戦争と死刑が論じられる。先進国で現在でも死刑が存続するのは日本とアメリカのみ。また興味深い数値として、太平洋戦争終了当時日本の敗戦に際して、日本人のBC級戦犯への各国の死刑執行数がある。

米国(死刑140 / 終身刑164)以下数字のみ

英国(223 / 54)

豪州(153 / 38)

オランダ(226 / 30)

中華民国(台湾)(149 / 83)

仏国(63 / 23)

フィリピン(17 / 87)

中華人民共和国(死刑、終身刑ともにゼロ)

 BC級戦犯は、刑罰に値する人間がいたであろうことは確かだが、多くは上官の命令に従っていたのみ。また、裁判も現地住民の証言によるところが多く、冤罪も多かった。

 そこへきて中国が死刑も終身刑もゼロ。日本が満州事変以来15年にわたって侵略をした中国が、兵隊たちの罪を問わない方針にでた。知る人ぞ知る「撫順の奇跡」。撫順の戦犯収容所では、肉親を日本兵に殺された人たちが負傷した日本兵の面倒を見るという場面があった。ここで釈放された日本兵たちの多くは、以後日中友好運動に参加してゆく。

 話が横道にそれた。

 3の暴力の生物学的背景では、男性が女性よりも暴力的な性質であることが書かれている。そして日本がいまだに女性の社会進出が遅れていると。

 

 4の原爆はなぜ投下されたか という章からずいぶん生々しい話になるが、すべて事実だ。一般に知らされていない事実。ポイントを箇条書きにすると。

・原爆投下により戦争が早く終わったのではなく、戦争が無用に長引いたことで原爆投下に至った。

・1945年2月14日に当時の近衛首相は、天皇に戦争終結の上奏をしている。これに対する昭和天皇の反応は、「国体の護持」のためにはもう一撃してからがいい、として戦争終結をさせなかった。「国体の護持」とは天皇の生命と地位の安全を求めるもの。

・米国ではマンハッタン計画として原爆の開発が進められていたが、巨額の費用を投じた開発に、結果を見せる必要があった。また広島と長崎でタイプのことなる核爆弾を落としたのは、それぞれの実証実験を兼ねていたことは広く知られている。

 

 5の集団的自衛権で増大する戦争協力のリスク以降は、まさに現在の日本が抱えている問題を簡潔ではあるが具体的に列挙している。改めて書きだしてみたい。

 

 最後に紹介されている25冊の本の最初は、入門書として佐藤忠男氏の「戦争はなぜ起こるか」が挙げられている。これと、アメリカの戦争について書かれているジョエル・アンドレアスの「戦争中毒 アメリカが軍国主義を抜け出せない本当の理由」の2冊を手に入れようと思う。それとこの本の著者の戸田清さんの著作をもうひとつ。