29 政府はもう嘘をつけない 堤未果
前にセットで紹介した「政府は必ず嘘をつく」の続編。冷静な現状分析と大切なことは何かを見直す示唆を与えてくれる。
表紙にもある言葉は副題のようなもので、
「お金の流れで世界を見抜け!」「ハゲタカたちよ覚悟せよ!」とある。前者は、世の中の腑に落ちない動向は、その資金の源をたどるとその理由がわかるということで、アメリカと日本の様子が割と具体的に述べられている。
結局のところ、不穏な政治はお金で動かされているということが見えてくる。
日本の政府首脳がアメリカの言いなりになっているのは、権力維持のためで、アメリカの意に添わなかった首相は不運な最期を強いられている。田中角栄しかり。
このアメリカというのは、具体的に誰なんだ。どのグループか組織に代表されるものなのかについても書かれている。それを突き詰めるとグローバル化した企業ということになる。その経営者たちは、富と力をさらに強大なものにするために政治家を動かす。
そこで、面白いのがこういう企業に金をもらっていない政治家がいる。彼らにやっと出番が出てき始めた。
民主党のバーニー・サンダースと共和党のトランプだ。バーニー・サンダースといえば、その清潔な身辺と紳士的なふるまいで支持を得てきたが、トランプの場合は過激な発言が受けた。しかしその発言内容はとんでもないもので、共和党自体が推薦に二の足を踏んだほどだ。
しかし、企業にお金をもらっていないという点ではこの二人は共通点がある。民主党だ共和党だという党派の違いがあるものの、企業の言いなりになる政治家かどうか。今、いろいろな問題を引き起こしているルーツを金の流れでたどると、グローバル企業に行き着く。
バーニーとトランプは同じコインの表と裏だ、という表現をしている人がいる。堤さんもそういう見方のようだ。
日本は、まだまだ現実に気づかない、のどかな庶民が大勢をしめているおかげで、参院選では右傾化した政権が多数を占めることとなった。しかし、アメリカではどうなるだろう。トランプ氏も共和党の代表となった今は、どうやらおとなしめの発言に変わってきているらしい。ウォール街から金をもらわない、政治資金を受け取らないスタンスを変えないで頑張ってほしい。