天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

血の絆 ジャーネージョー・ママレー

 ミャンマーの作家、ジャーネージョー・ママレーの小説「血の絆」。1977年に原田正春氏の翻訳で日本でも出版された。これは1973年当時のビルマにおける超ベストセラーで、現在でもミャンマーの書店で売り上げNo1と紹介されている。


 先日のテレビ番組で紹介され、これは読んでみようと図書館で借りた本。借りないと売ってない本。ネットで7800円の値がついていた。
 太平洋戦争時代に、一人の日本人将校がビルマ占領時に現地の女性と結婚をして男児が生まれた。しかし敗戦で彼は捕虜になり帰国。日本には死別した前妻に女の子がいた。その女の子(由美)は、父の死後、ビルマにいるという弟を探しに日本語教師となって現地に行く。
 戦争の犠牲となった両国の庶民の物語だ。ビルマの弟は母にも先立たれ、侵略者日本軍の子供としてつらい境遇で育つ。理解ある青年の手で育てられ、大学生になった彼の前に由美が現れても、日本人の子であることを隠して育った彼は日本人を受け入れることができない。
 敗戦後、侵略され乱暴のし放題をされた側の人たちは、日本という国を憎んでいたが、著者は、日本に来る機会を得て、広島などの惨状を見て、日本人も庶民は戦争の犠牲者であることを思い、この小説を書くことを構想した。
 結びの方では次のようなことが書かれている。
「日本軍はビルマに侵入するまでは、ビルマに完全独立を与えると約束しておきながら、ビルマに来てから態度を変えた。態度を変えたのは、侵略と支配を欲した頂点に立つ権力者たちの都合によるものであった。」
「日本はその後どう反省したのでしょう。日本はあの戦後の苦しいさ中に、なんとかして迷惑をかけた国々に謝罪したくて賠償を払いました。・・・それで帳消しになったと考えてはならないでしょう。また、だから日本は平和に徹した憲法を制定しました。」
 外国の人はよく理解している。日本国憲法をこのように見ている。それを今更取り下げてはいけない。これを取り下げることは、また侵略的行為をするかもしれないという不安を周囲の国々に与える。絶対守らなくてはならない。
 訳者によれば、この本がビルマで出たとき、ビルマの全国の読者から「大変感動した」「これで反日感情が解消した」という声が著者に寄せられたとか。この本が今でもミャンマーで多くの人たちに読まれているということは、憎むべきは戦争そのものであり、戦争を仕掛ける権力者だということが理解されつつあるということだ。
 こういう国々の人達といつまでも、いつも仲良く暮らして行ける社会を確保しなくては。
 と思うにつけ、シリアの内戦がいったん停戦になったことは喜ばしい。これは単なるパワーバランスでなく、真に戦争を反省した結果であってほしい。