天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「国富論」 原丈人

 「国富論」といえばアダム・スミスだが、原ジョージという人もこのタイトルで本を書いている。21世紀のというただし書きが付いた国富論で、最近は増補版も出ている。ここで紹介するのは2007年のオリジナル版だ。
 こんなことを書いて実践している人がいるんだ。というのが実感で、表紙に「今の日本だって捨てたものじゃない。なぜなら、この人がいるから。」と書いてるのが、読んでいて納得できた。ただし、日本にいるのかアメリカにいるのかよく分からない。氏がここまで成長した舞台はアメリカはシリコンバレーだ。その経験を生かして日本をよくしようというのがこの本。なので、思い付きで簡単に書ける本ではない。そういうことがあとがきからもわかる。
 「株式会社は誰のものか?」という問いに「会社は株主のもの」とする考えをバッサリ否定して「会社の存在価値は、まず事業を通じて社会に貢献することが第一で、その結果として株主にも利益をもたらすというのが本来の姿」とする。このスタンスで本書は、いや氏のスタンスは貫かれていて、すでに具体的に色々な活動を実践しておられる。
 成功したベンチャーキャピタリストでもあるので、その人脈も相当広そうだ。しかし、事をなすのに一番大切なのはそのスタンスであり、その志の向かう方向だろう。
 原さんは、これからをポストコンピュータの時代として、自らPUCと称するコンセプトを提唱されている。パーベイシヴ・ユビキタス・コミュニケーションといことで、従来の階層型あるいは一極集中のデータコミュニケーションではなく、ネットワークでデータも分散していてかつ必要な情報に瞬時にアクセスできるというアーキテクチャーらしい。
 最近パソコンに代わるツールとして登場しているスマホタブレット端末が、このPUCを実現するツールのようにも見える。しかし単なる情報ではなく、データへのアクセサビリティや業務用に耐えうるものとなるとちょっと違うようだ。これらの中に、本物と偽物が混ざっているかもしれない。
 21世紀の日本に期待していることとして、世界で一番税金の安い国にしたいとのことだ。消費税を上げようという時期に何を?と思うかもしれないが、その理屈のよりどころは、政府が税として徴収したお金を事業に投資するのではなく、庶民を含むみんなkんの投資家が直接色々な事業に投資する(できる)流れを作ることで、せっかく集めたお金が管理費や利権に流れることなく、事業として活用されれば、税は安く、政府も小さくて済む。
 ただし、病院などを株式会社化してそのサービス低下を招くようなことは禁じなくてはならない。などなど、ここに書いてあることについてはいちいち尤もであると思える。
 この人の活動自体、ネットで見ることもできる。
http://www.allianceforum.org/
 あくまでも経済的視点からのアプローチであり、氏の得意とするIT分野での話だ。即ち、核(=原発)の問題や、自然災害、右傾化への危惧などについては語られていない。しかし、日本が健全化することへの道筋を語りつつ実践している人だろう。
 結びの言葉に「人が育ち、人が集まる環境を作る。それが、世界から必要とされる21世紀の日本」としている。この言葉で、原発事故で、外国人が日本から大勢逃げ出したことを思い出した。今のままでは、地震国に原発があるだけで、日本は好んで来たい所ではないということか。ここのところも、併せてなんとかしないと。