天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

The Ring by D.S.

 The Ringと題されたこの本。題字の意味は文字通り指輪のこと。初版は1980年に出されている。33年も前であるが、古さを感じない。何故なら、物語の時代背景が第二次世界大戦の前後が中心。なので、30年前に書こうが今書こうが、作者にとってのテーマは変わらない。
 舞台はドイツから始まってアメリカへ。第二次大戦のドイツといえば、ナチのユダヤ人虐殺。この話はまさにそのことで悲惨な体験をした人達の愛の物語。あの時代を生き抜いた人達、命を落とした人達の話。
 指輪は、その中で四代にわたって母から娘に伝えられてゆく。命を伝えるもののように。
カサンドラは、ベルリンの郊外のお城のような家に住む銀行家に嫁いだが、穏やかな高齢の夫との生活に飽き足らず、日課の散歩で知り合った若い芸術家と恋に落ちる。時代はナチがユダヤ人を断圧しはじめる頃。その芸術家はユダヤ人であった。
 カサンドラは、ユダヤ人の恋人がナチに殺されたのを悲しんで自ら命を絶つ。夫は全てをお見通しであったが、妻を愛しその死を悲しむ。残された家族は夫と兄妹の3人だった。夫はナチのやり方を必ずしも快く思わず、知り合いのユダヤ人を国外に逃がしてその命を助ける。そのうち兄にナチから兵隊への召集が来た。その時、父は同じように彼をスイスへ亡命させることを計画し、自ら連れて逃走の旅にでかけた。
 無事に兄を国外へ脱出させたものの、残された妹アリアナのもとに帰る途中、ほとんど暴徒化した国境警備の兵隊に殺されてしまう。父親は、万が一何かあった時のことを思って、アリアナに母親の形見である見事なエメラルドの指輪を渡しておいた。必要なときに、これをお金に変えて生き延びるようにと。
 残されたアリアナは、使用人の密告によりナチに連行され、父の戻るまでのおとりになる。しかし父親が戻らないことが分かると、家は没収されアリアナは危うくナチの慰み者になるところであった。それを救ったのが、同じナチの将校マンフレッドだった。彼とは心が通じて、ドイツの敗戦が決定的な時期にも関わらず結婚をする。
 いよいよドイツが最後の時に、マンフレッドはアリアナに国外へ逃げる手はずを教えて、自分はナチの司令部の守りにつき、命を失う。アリアナは親兄弟も、愛する夫も失い茫然自失のままなんとかパリまでたどりついた。そこには夫が訪ねるように話していた難民救済の組織があった。そこの勧めで彼女はアメリカに渡る。
 そこではユダヤアメリカ人の夫婦に引き取られるという幸運に恵まれ、戦争帰りの息子に一目ぼれされて結婚を申し込まれる。しかしその時、アリアナは死んだドイツ人の将校の子供を身ごもっていた。しかし逃亡生活以来、体調のすぐれないアリアナの様態を見ていた医者のさしがねで、そのまま結婚してしまった。しかしアリアナはそのことを白状してしまう。怒った親子は、アリアナに当座のお金を渡して追い出してしまう。
 アリアナは独りで子どもを産む。一方父親に助けられたユダヤ人の知り合いが、戦後アリアナのことを探し続けてとうとう見つけることができた。彼、マックスの保護もあり、アリアナは息子を育てることができた。その息子がハーバードを卒業して一人立ちする時に、連れてきた彼女が実はアリアナがアメリカに来た時に助けられ、裏切る形になって離婚した相手の娘だった。
 と、このあたりからハッピーエンドに向けてのどんでん返しの連続。
 息子のお相手の素性がそれと知ってアリアナは躊躇するが、結局は相手とも仲直りをし、息子が一人立ちをするのをきっかけに、長い間保護者のようにしてそばにいたマックスと結ばれる。アリアナは息子の相手タミーと結ばれることを認め、タミーに今まで自分の身を守ってくれた母親の形見のエメラルドの指輪を贈った。
 そのタミーの友達にイタリアから来ているブリジッドという中のいい友達がいた。息子と、タミーがヨーロッパに新婚旅行でイタリアの友人の家に立ち寄ると、宝石商であるその父親がタミーの指輪を見て驚いた。なんと彼は、行き別れになったままのアリアナの兄だったのだ。兄が、確かめる為にただ宝石商としてニューヨークに住むアリアナの家を訪れるところで物語は終わり。
 ついつい最後まであらすじを書いてしまった。一言で言えば、ダニエルらしい男女の愛の物語であるが、背景をこの時代に持ってきて反戦と、人種差別のバカバカしさを訴えていると読みたい。