天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

崑崙の河

 陳舜臣のミステリー小説。短編が五編収録されている。陳舜臣氏といえば、歴史作家とばかり思っていたが、中国を舞台にしたミステリーが面白い。
 陳さんの本は、今までは物語よりも歴史や旅行記のようなものを読んでいた。彼の作品を読むきっかけは「耶律楚材」と言う本を名古屋の坊さんに勧められてからだった。以来折に触れて、彼の書いたものを時々手にしている。年齢が司馬遼太郎氏と同じで、かつ自分の父親とも同じ、ということもなんとなく気になる作家である理由だろう。
 その陳氏が比較的若い頃には、このようなミステリーを書いていたのだ。文庫本のあとがきが1971年7月とある。自分がまだ社会人になる前だ。あの頃は、石川達三だとか曽野綾子遠藤周作といった作家の小説を読んでいた。
 中国と言えば、文化大革命のさなかであり、自分にとって中国はブラックボックスだった。そんな頃に、こういう小説が書かれていたのかと思うと感慨深い。当時はこいうい作品を理解する層はひょっとすると少なかったのではないだろうか。
 当時の中国人感覚では書き得ない。かといって中国や中国人を知っていなければ書けない作品だ。陳さんならではの小説たちと言える。では、現代の中国を舞台にしたら、陳さんはどんな物語を仕立てるだろうか。興味深い。
 現代の中国人作家の作品は、中央大学の翻訳本を時々読むが、時代が違うことを考慮してもやはり陳さんとは同列には比べられない。色々な意味で模索をしている作品が多いように思う。
 テレビでは、現在の中国において儒教に救いを求める人や、キリスト教で魂が救われている人達がいることを伝えていた。もはや拝金主義だけでは疲れてしまうところまで来ているのではないだろうか。