天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「三国志と中国」という本

 これは、陳舜臣氏といろいろな中国研究家の人達との対談集。読んでいると、話題は諸葛孔明のことが多い。三国志では悪役のように書かれている曹操が実は意外と評価されてもいい人物であること。しかし中国でも一般には京劇などで扱われると悪役になっている。そのほか、三国志の主人公たちはそもそもどういう出自の輩かということなどを語り合っている。そういうのを読んでいると、また三国志を読みたくなってきた。
 一度読んだ三国志は、吉川英治版だったがその後いろいろな人が書いている。最近では北方健三氏のものが読み、語られることが多い。が、まずはこちらの本の語り手の陳舜臣氏の「秘本三国志」を読まなくては失礼ではないかな。それから北方節へと読み進むのがよかろう。そうして三国志を読んでいて、だんだんはまって三国志フェチになってゆく人がいる。それはそれで、趣味として悪くはないだろう。ホームズにはまって、その種の本を集めるのが趣味という方もいた。
 ところで、三国志本体はともかく、それを語っているこの本。オリジナルは色々な雑誌の対談をまとめたものだ。読み進むと、田中角栄の訪中であるとか、周恩来がどうしたこうしたとかが話題になっている。文庫本自体は1995年の出版だが、各オリジナルの年代を見ると多くが1974年。最も古いので1971年とある。毛沢東がまだ健在で、四人組が活動をしている頃だ。そういう時代に、日本の中国通の人達が三国志を語っているのだ。
 当然、中国の政治風土や日本との比較なども語られている。そう、「語る」という程度であり「論じる」とまではいかない。しかし貝塚茂樹さんなどの著名な学者の語りも聞ける。
 「文人」と「武人」の違いなどのくだりは面白い。そういう分類の人達の有りようは、今の時代にも十分通じる。武人即ち軍部などは、どうしても狭いものの見方しかできない。そういう輩が国政に影響を及ぼすのはよくないが、そういう道をたどったのが戦前の日本だ。そこまでここには書いてないが、そういうことが分かる書きぶり、いや語りぶりだ。
 三国志も、そのようなところまで考えながら読むとまた味わい深いかもしれない。