天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

インド三国志 陳舜臣

 三国志を色々読んでみようと思っていたときに、このタイトルが目に着いた。インドなので、中国の話とは関係ないのは分かっていたが似たような状況の時代があったのか、と思って買いもとめておいた。雪に閉ざされて読んだ本二冊目。
 本のタイトルはともかく、インドについてはあまり知らないので少し読んでみようという程度のつもりであったが、陳さんにとってはなかなかの思い入れの本だった。ということが読んでみてわかった。陳舜臣さんは大坂外国語大学のインド語科を卒業されている。
 三国志というからには、インドに置いて三つの勢力が拮抗していた話だろうとは想像できるところであるが、ほぼそのようなことだった。時代は1600年代。ムガル帝国が衰えてゆく頃の物語だ。当時の皇帝は第6代アウラングゼーブ。少し有名な5代シャー・ジャハーンの三男にあたる。
 その頃は、ヨーロッパからポルトガル、オランダ、イギリス、フランスなどが進出してきており、英国がインドを支配する前の状況が描かれているともいえる。
 世界史ではマラーター同盟というのは1707年から1818年まで続いたヒンズー教の国家とされているが、アウラングゼーブ帝の頃はマラーター族として、デカン高原を中心とする山岳地方に出没する「族」であった。
 この勢力とインド西北、パキスタン側のラージュプート族とムガル帝国との三つ巴の勢力争いが「三国志」とされた所以だろう。その横でヨーロッパ列強同士が勢力争いをしている。
 以下、文章の中でチェックした箇所。
・力によって住民から税を取り立てる。その組織が「国」である。
・会社に忠実な社員が、会社の利益は国家の利益につながる、と自分に言いきかせて努力するのはよくあることだ。(自分も昔そうだった。)
・インド人は記録を残すことにかけては、中国人ほど熱心ではない。インド人にとっては歴史よりも宗教の方が大切だったせいかもしれない。人間の世俗的な行動よりも、精神のうごきの方が根本的なものである。そして、人間の精神のうごきは厳密に言えば記述が不可能なのだ。それをとらえるのは文字によるのではない。
 この時代の後、インドは英国の支配下に置かれてしまう。台湾出身の陳さんは、当時のインドも台湾も同じ「植民地」としてとらえる。ゆえにインドがどのように近代化を果たして行ったかについてもしっかり見つめようとされる。この本はいわばその序章でもある。ということで、最終章は「最終兼序章」としてある。
 台湾出身といっても、陳さんは神戸生まれ。日本は、両親の国籍でその人の国籍を決める仕組みなので、台湾に行ったことがなくても台湾人になる。むろん陳さんは台湾にも中国にも足を運んでいるが、日本に生まれて日本語で育っても日本人とされない人達がいることを知らなければならない。この物語そのものとは直接関係がないが、陳さんのような立場の方は大勢いる。二胡でお友達になった黄さんもその一人だ。もっと仲良くしようかと思ったりする。