天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

17,18,19 阿片戦争 陳舜臣

 久々に本の記事。読みたかった陳舜臣さんの「阿片戦争」上中下。この前にやはり陳さんの「実録アヘン戦争」というのを2回も読んだ。なので、出来事としてのアヘン戦争は知識として知っていたが、小説で文学の阿片戦争は面白い。

 何が面白いかというと、アヘン戦争の立役者である林則徐が特に主人公ではなく、実在の人物やフィクションの人物が入り乱れて、この時代背景での人間模様が展開される。特に、清朝の官僚社会は現代の日本の官僚たちの振る舞いに通じるものがあり、官僚社会とはこんなものかと、人間の進歩の無さを思い知らされる。
 何より面白かったのは、このアヘン戦争、中国側では新しい世の中が来るための必要悪だと捉える人たちがいたということだ。林則徐自身、勝てるとは思っていなかったが、後の世のために立派に戦うことが必要であるとの思いで、阿片船から阿片を召し上げた。
 腐りきった官僚社会に牛耳られていた中国は、外からの強烈な刺激がない限り変わりようが無いと。特に清朝漢民族の支配ではなく、少数派の満州族が支配階層として君臨していた。面白いのは、各地の戦いで清朝政府軍を相手に英国側に雇われる庶民たちがいたということだ。
 国を裏切る国賊は漢奸と呼ばれた。しかし、北から派遣された国軍の兵隊は満州族で、地元の庶民から略奪もする。こういう状況から、生きるためには何でもするという発想が中国人の生活感に根付いているという説もある。これはアヘン戦争に始まったことではないだろう。
 さて、中国という国を立て直すには英国とドンパチやって中国人の血を流すことが致し方ないと考えていた冷静な人たちがいたわけだが、戦争がいかに庶民を犠牲にした悲惨なものだったかということもしっかり描かれている。
 広州駅の北のほうに、三元里という場所がある。ここに私も滞在していたことがあったが、ここはアヘン戦争の当時、地元の庶民が頼りない自国の軍隊には頼らず、庶民が決起して英国軍に打撃を与えた場所で、その記念碑が立てられている。
 このアヘン戦争のあと、何度も何度も人類は戦争を経験して、悲しい歴史を作ってきたにも関わらず、まだ辞めない。日本は、戦争をしないと誓った憲法を持ちながら、これを無視してよその戦争に参戦しようという動きまで出てしまっている。
 アヘン戦争は、腐った政治体制を破壊して、新しい時代を呼び込むために流された血だった。
 では、今の日本の腐った体制をぶち壊すにはどうしたらいいのか。知性を身に着けた庶民は、憲法で保障された民主主義の手段で戦う。言論の自由と、選挙。集会と結社も自由。ネットは強力な武器であるが、反動勢力も使っとるので騙されない知性が必要。