天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

狼火は上海に上がる

 日中合作映画。1944年の作品。ということは、日中戦争の終盤のころのものだ。現代中国映画上映会での上映。会報の冒頭にこう書かれている。
「めすらしい映画の上映ができた。本作の存在自体は昔から知られていたが、日本にも中国にもフィルムが現存せず、幻の作品となっていたのだ。」それが、ロシアにあることがわかり2001年に大映が買い戻したとのこと。
 物語の時代背景は、高杉晋作が上海視察をしたときのこと。当時の中国はアヘン戦争の頃で、上海には既に租界地があり西洋人が我が物顔に暮らしていた。一方で太平天国の乱と言われた一派が世直しの活動をしていた。
 映画のテーマは、太平天国の将校と高杉晋作との武人同士の交わりといったところ。
 時は清朝末期。太平天国軍が上海まで攻め上がるに際して、当時租界にいた英米に中立の立場を求める役割をもった太平天国の沈翼周が清朝政府軍に追われているところを高杉晋作が助ける。そのとき交わされる二人の会話がひとつの山場だ。沈翼周は同じキリスト教を信奉する英米は、キリスト教徒である自分たちに協力してくれると信じている。高杉は、租界などを作って中国(当時の清国)に侵略している英米を信用してはいけないと警告をする。が、沈はその忠告に耳をかさない。
 太平天国は当時中国をむしばんでいたアヘンを禁止する為の行動をしていた。これが英国の利害に反する為、英国は太平天国を裏切る。そのことが分かった沈と高杉はこれからは英米を追い出そうと握手をする。
 太平洋戦争末期に作られた一種の国策映画。それにしては良くできている。主役の高杉晋作は、坂東妻三郎が演じている。当時版の「日中友好」促進映画のつもりだったのかもしれない。しかし1944年というこの時期は、日本も散々中国をないがしろにしてきた後だろう。
 誰に見せる為の映画かというと、舞台が上海であっても日本語ベースであることからも、日本人向けの映画で、特に国内の日本人、当時中国で日本が何をしていたかをよく知らない日本人に向けて中国人の為に欧米と戦っているのだというメッセージが込められているように見える。
 映画というのも、色々な使われ方があり、色々な見方があるものだ。
 昨日は、実は三本立ての上映会で、うち2本を見た。もう一本が「愛戀花火」という題で、こちらも時代背景は清朝末期であるが1993年の西安映画製作所の作品。純粋な中国のエンターテンメント映画。花火製作工場の女主人の恋物語で、ハラハラさせられながら当時の風景と中国の文化を楽しめる面白い映画だった。