天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

秘本三国志 陳舜臣

 陳舜臣さんの「秘本三国志」第1巻から第6巻まで完読。通勤電車の楽しみだった。35年前の本だが、元々時代背景は紀元200年頃からの話なので、35年前くらいはものの数ではない。
 色々な人が書いている三国志。陳さんの場合は、歴史書を読むような冷静さで書かれている。前半は曹操がよく書かれている。全編を通して道教五斗米道の女教組少容が出てくる。これは、血なまぐさい戦いが続く中で、人々が精神的な安寧を求めるという役割で語られている。この時期、仏教は外国人の宗教として認められているが、次第に人々に広がってゆく。
 北方謙三氏のように、グイグイ迫ってくるタッチではないが、随所に陳さんの主張がちらりと語られる。最後の一言はまさにそれだ。
「『三国志』の物語は、中国の庶民が統一平和を念願し、祈りをこめるようにして、代々、語り継いだものである。」
 中国での三国志人気はそういうことだったのか。戦争や争いごとはごめんだ。平和がいい。という願いが込められた物語であり、陳さんの書きぶりもそういうところにある。とりわけ、諸葛孔明は三国がバランス良く分立することで平和を実現しようとした。彼の死後はその体制は長くは続かなかったが、統一が平和で暮らしやすいとは考えなかった。
 これは現代中国を考える時も、重要なキーワードではないだろうか。統一のための内戦時代があった。そして共産党による統一が成ったが、チベットウイグル内モンゴルなどの地方では必ずしも漢民族文化になじみ切れない。強制的な同化政策もそこの庶民の幸せには程遠い有様だ。
 民族問題だけでなく、都市住民と農村戸籍を持つ人達の差別政策も大きな問題として顕在化している。広い国土を統一支配しようとする為の施策が、庶民の為になっていない。
 色々考えさせてもらえる本だった。次はだれの三国志を読もうか。あるいは陳さんの時代物語でも読もうか。