天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「歌舞伎町案内人の恋」 李小牧著

 夕方から夜にかけて、大雨の降る予報があったので、夕方開始の中国現代映画上映会に行くのをやめてしまった。今月は「サンザシの樹の下で」というタイトルの映画の予定だったが見逃してしまった。また次の機会に見ることにしよう。そういう機会があれば。
 その代わりにというわけでも無いが、今日は在宅で中国人作家の本を読んだ。それが、この本。著者の李小牧という人は、今年になって二度行った新宿の湖南料理の店のオーナーである。
 普通に本屋で見かけても、自分では決して買うことの無い類の本だろう。しかし、初めてお店に行ったときにそこで安く販売していたのを見ていて、二度目につい買ってみたのだった。
 内容は著者が自分のことを、恋の遍歴を中心に書いた一種の自伝。この本は2009年の出版であり、この時点で彼は中国から新宿に来て21年ということだ。自称作家で「歌舞伎町案内人」ということだ。どうも怪しげな職業のように思えるが、今は彼の出身地である湖南省の地元料理の店のオーナーであることは間違いない。最近の著作では「微博(ウェイボー)の衝撃」というタイトルの本も出しているので、物書きであることも間違いない。
 掲題の本を読む限り恋の遍歴といえば聞こえはいいが、かなり大変な女性遍歴をこの書面で白状しているというもの。ちなみに結婚を6回しているが、うち3回は今の奥さんが相手。中国人がみなこうということではないが、中国人民の男女感覚がなんとなくわかる。色々な意味で、日本に来ている中国の人達の一面を見たような気もした。
 彼自身は、湖南省の長沙という、毛沢東と同じ地域の出身で、農民ではなく知識階級の出であるが、相手にしてきた中国の女性の中には、本当に貧しい田舎の農家の娘もいた。風呂も無い家で、トイレは外に穴があるだけ。そういうところで育った娘であれば、人殺し以外なら貧困から抜け出す為に何でもするということも、著者の体験談として書かれると、そうなんだ、と妙に納得してしまう。
 中国からの留学生、就学生といっても色々なケースがある。就学生で、日本人感覚で理解できない行動をとることがまれにあるが、それは実は背景に似たような事情があるのだろう。先日、殺人事件を起こしてしまった就学生もいた。もともと就学生の制度は、日本で日本語を学習しながらその間は学生アルバイトだから不当な低賃金で働くという、労働力の補給制度のようなものだ。
 ともあれ、この本の著者は日本一の歓楽街に中華料理店を持つほどの成功者だ。中国から来て成功している人のかなり特殊な事例であろうが、登場人物の様子を見ると、同じ中国出身で在日で生活している人たちの、現在に至る苦労とか生活感覚がしのばれると言う点で、面白い本だった。