天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

地図から消される街 青木美希

 ネットで紹介されているのを見て注文した本。

f:id:mm3493:20200422133848j:plain

 コロナで大騒ぎしているが、どさくさに紛れて年金支給を75歳からにするとか、いろいろと見逃がせないことが決められている。とんでもない政府だ。

 「棄民国家日本」という評価が今の日本だと思う。

 今年になって、福島の一定地域が避難解除になり地元に帰ることが推奨されている。が、原発事故の後始末は全くできていない。避難解除=支援の打ち切りであり、帰りたくない人は生活に困窮する。帰りたくないと書いたが、放射線量が不安で帰る決断ができない人や、避難先で始めた生活を今更また捨てて元の場所に帰るに忍びない人もいるはず。帰るといっても、自分の家の中は除染作業の対象外で、地震でちらかったまま、動物たちも出入りしたりで、かたずけ作業から行わなくてはならない。

 この本は、朝日新聞の青木美希記者が避難されている人たちに密着取材をして、避難生活の実態。困っている実情を世に知らしめようとしたものだ。

 

 目次に沿って簡単な内容紹介をしたい。

序章 「すまん」原発事故のために見捨てた命

 ここでは、3.11の地震津波の直後、倒壊した建物や土砂の下敷きになった人たちを救出する作業が始められようとしたが、原発が爆発して放射能による被ばくを避けるため、消防団などの救助作業員も退避を余儀なくされ、まだそこに埋もれていた人を見捨てたという悔恨などが述べられている。

第1章 声を上げられない東電現地採用

 福島の当該地域では、事故前は東電の原発は地元の人たちの働き場所でもあった。そこに職を得ていた人たちは、被災者であると同時に東電社員でもあるので、実態を声高に訴えられないで、板挟みのような状態で後始末の仕事に従事している。

菜2章 なぜ捨てるのか、除染の欺瞞

 除染作業の実態がどのようなものだったか、実際に作業員に取材をして書かれている。汚染土砂を川に流したとか、作業対象区域外に移しただけとか、実際に現場作業している人が疑問に思う作業が行われている。これもスケジュールありきで、やった感があればよい的ないい加減さが赤裸々に示されている。

第3章 帰還政策は国防のため

 強引な帰還政策は、原発を維持する国の方針によるものであるが、これは原発があることでいつでも核保有国になれるという考え方が底にある。識者への取材では、1年あれば核弾頭が作れるとの答えを得ている。

原発が国防と考える政治家が大手を振っていることが問題と私は考える。

第4章 官僚たちの告白

 不条理な決定がされてゆく、事故後の原発政策や帰還政策について、推進役の役人への取材をすると、必ずしも彼らの本意ではないことがいくつもある。例えば、原発事故の責任主体である東電は解体すべきとことろ、政府が国家賠償を避けるために東電を存続させて東電の賠償にとどめてお茶を濁そうとしている。東電解体という考えをもつ官僚は口封じされている。

第5章 「原発いじめ」の真相

 福島から子供のために他地域(ここでは東京)に避難している家族の実態。子供たちがいじめを受け、それに対して学校や教育機関はどのように対応していたか。原発事故なかりせば謂れのないいじめを受けていた子供たちが可哀そう。その親、家族も大変。避難の是非をめぐって夫婦関係がこじれる。いじめに関する学校や教育機関の対応が避難者に冷たいところが情けない。

第6章 捨てられた避難者たち

 こうした中での避難解除。それに伴い住宅がなくなる、大学生となったこどもが生活のためにアルバイトをすれば、その収入を根拠に支援を打ち切られ、結局大学中退するとか、まったくひどい話。そして記者が取材していた母親は自殺するところまで追い込まれていた。

エピローグ

 避難解除された浪江町の商店街を記者が歩き、人が戻らない実情を書いて括っている

 

 2018年に出版された本なので、すでに目にされた方も多いと思う。7年にわたる取材に基づいたルポだ。この記者は最近、配置転換で記事を書けない部署に移されたとか。その後どうしたか。こんな記事もある。

togetter.com

 日ごろマスゴミと言っているが、中には素晴らしい記者もいるのだ。ジャーナリスト魂に則り、良心の命ずるままに行動する人たちがいる。真面目な官僚ももっと声を上げろと言いたい。しかし森友問題では、文書改ざんを命令された近畿財務局員は自殺して、その奥さんが遺書公開に踏み切った。これは支援しなくては。

dot.asahi.com

 

 この本のサブタイトルに「3.11後の『言ってはいけない真実』」とあるが、被災者の中にも行政の方針にしたがおうとする人たちがいて、ここで主に取材の対象となった自主避難者のことをよく言わない。しかし杜撰な除染作業と、何よりいまだに原発廃炉にめどが立っていない。

 そういう状況でよくもまあオリンピックを呼びこんだものだ。コロナで1年延びたとはいえ、まだやる気でいる。

 民を捨て、経済優先になんの意味があるのか。経済優先の過去が地球環境の破壊につながり、その結果今回の新型ウイルスが出てくる。という現実にまともに対応できない政権は即刻いなくなってほしい。

 アベノマスクはどうも不衛生な環境で作られたので、知りえたところで既に6700の不良品が出ているらしい。受け取り拒否が妥当だろう。ホームレス支援センターに送ると喜ばれるらしいが汚れ物を送ってもなあという気がする。