天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

蒼穹の昴

 以前テレビドラマで見た。

 会社に行かなくなれば、本がたくさん読めると思っていたが、そうでもない。通勤電車は読書タイムだったのだが、その時間が無くなって好きな時に読めるとはいえ、優先順位は二胡が上なので本読みは後回し。
 というわけで、この本上下2冊も長い時間をかけて読んだ。長期にわたると、主人公や書き手の作家と付き合う期間が長くなり、それだけ主人公に親しみがわく。ような気がする。
 ともあれ、壮大な歴史ドラマ。清国末期の様子を描いたもので、浅田次郎の力作。「中原の虹」を前に読んだが同時代のもの。次は「珍妃の井戸」を読みたくなる。
 蒼穹の昴では、西太后が甥である光緒帝との政争の顛末と、そこにかかわる様々な階層の人々を描いたものだ。綿密な調査に基づいて書かれたものであろうが、著者の想像力には感服する。
 この政争は、列強に国土を踏みにじられている清朝末期に、制度改革をしなくてはこの国が持たないとする有意の若者たちが光緒帝を担いで改革を行おうとする。その中に科挙制度の廃止もあった。旧態依然とした官僚体制を改革することで国を強化しようとした。その理想に走る有様が旧体制の中で権力を維持してきた者たちが反発し、西太后も旧体制のままでは清国が滅びることを理解しながら、理想が先走る様子を危ぶむ。
 西太后が改革の足かせと思う改革派が彼女の暗殺を謀って失敗する。これを光緒帝の仕業と見た西太后は皇帝を幽閉してしまう。
 旧態依然とした体制で、利権にしがみつく官僚体制。このことは今の日本の問題と同じじゃないか。そういう連中には、正義感に燃える頭の切れる首相ではやりにくい。おだててうまい汁を吸わせるとか名誉欲をくすぐればホイホイいうことを聞く首相のほうが都合がいい。
 その結果、弱者が置き去りにされてしまう。国民主権をうたった憲法すら自分たちの都合にいいように変えようとする。民主主義もあったものではない。日本は、国民がその気になれば、血を流さずとも改革ができる制度下にある。しかし長いものに巻かれてその日暮らしを良しとする国民性では、真の民主主義はおぼつかない。
 歴史に学ぶこともしなければならないが、歴史認識もできない政治家が大きな顔をしている。なんたるちあ。