天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

血と夢 船戸与一

 満州国演義を読んでから、船戸氏の作品をもう少し読もうと手にしたのがこの本。アフガニスタンを舞台にした作品というので興味を持った。
 アフガニスタンというと、中村哲医師の活動は心得ているが、他の日本人がどのようなかかわり方をしているのか、またアフガニスタンの実情が具体的に分かるものは無いかと思っていたところに船戸さんの著述紹介に出ていたので早速注文。(本の断捨離が進まない)
 「血と夢」というタイトルは、夢は血で贖うものだということ。それほどアフガニスタンは歴史的にも自然環境も厳しい中で、人々は生き抜いてきた。我々は夢は努力して叶えるものと教わってきたが、アフガニスタンに生きる人々の夢は、そういう生易しいものではない。
 侵略者に抗して、自らの生活、文化、宗教、生き方を守ろうとする歴史。夢は自分たちの民族の独立した社会を守ることであり、平和なクニの競争社会で個人的に優位に立とうというような夢ではない。
 中村医師は、アフガニスタンに暮らす人々の環境整備のお手伝いをしに行っている。
 船戸与一氏は、アフガニスタンを取り巻く政治の動きの中で、その中で生き抜く人々の生きざまを現地の視点から明らかにしている。無論これはフィクションであるが、満州国演義に描かれた歴史が事実であると同様、アフガニスタンを取り巻く各国の動きなども十分に調べたうえで、実際にある又はありそうな出来事を踏まえている。
 ここで浮き彫りにされるのは、政治権力は時に自分または自分たちの権力欲の維持拡大のために、科学技術や宗教、教育までも利用し、また犠牲にしてしまう。
 また主人公は非合法員とい呼ばれる身分で、金銭で雇われて雇い国のためにスパイや戦闘活動をする。どうもそういうことを実際にやっている人がいるらしい。「非合法員」というタイトルの作品も書いている。また読んでいると断捨離が進まない。