天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「アジア廻廊」甲斐巳八郎・甲斐大策

 この本は貴重な本だ。こういう本はなかなか無い。
 甲斐大策氏の存在を知ってから、何冊か彼の著作を読んでみたが、彼がどうしてアフガニスタンにはまって、イスラム教に入信までしたのか、そこのところが分からなかった。それがこの本を読むと、お父さん(巳八郎)の影響があったことがわかる。
 前半は大策氏の文章で、割と最近のアフガニスタンの庶民の様子が、彼独特の言い回しで述べられている。後半はお父さんの巳八郎氏の記事だ。場所は中国。主に満州昭和6年から10数年。満州事変の前後の頃だ。満州だけでなく、上海およびその附近や、南京、北京の当時の様子が描写されている。
 当時、中国にあってそこに住む日本人向けの新聞に載せられていた文章が中心だ。当時のまま、仮名遣いが旧仮名遣いの文章だが、現地庶民の目線で、日本人の存在はさぞお邪魔虫であろうという感覚で、地元の人達への敬愛が感じられるとてもいい文章だ。
 それから終戦、引き上げという経緯があったろうが、そこのところの記録はない。また1970年代になり、家族旅行でアフガニスタンまで行った時の文章が少しある。
 この時に息子である甲斐大策氏は大いに影響を受けたのだろう。しかし、この二人は親子と言うよりも、同じアジアにはまった者同士という間柄で生きてきたようだ。
 巳八郎氏の描写は、当時の満州の中でもハルピンが多い。ちょうど次に行こうとしている場所なので、大変興味深く読んだ。今の長春などは、当時何もないところに日本が新京として作った街だということがここからも分かる。そして、当時も、そして恐らく今もさして変わらない、そこに住む中国の庶民の生きざまが描かれている。
 今度行ったら、大いにハルピンの街歩きを楽しみたい。
 それにしても、この本は貴重だ。なかなか当時の記事をこういうふうに読めるものは少ないのではなかろうか。また、甲斐親子のスタンスがとてもいい。