天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「聖愚者の物語」 甲斐大策

 47の短編が集められている。本の帯の背には「最も神に近い人々」と記されている。ひとつひとつの物語は、アフガニスタンに生きる庶民のひとりひとりの物語であり、47人の主人公がいる。
 「聖愚者」とは何か。読んでいて、ただひたすら生きる人達。運命を受け入れて生きざるを得ない環境の中で、生き、そして死んでゆく人々。そういう人達のことを甲斐大策さんは「聖愚者」と呼んだのだと思った。
 各物語には、必ず甲斐さんの線画が添えられていて、その絵からも甲斐さんのアフガンの人達への愛情がうかがえる。
 そんな風に読んでいたら、あとがきのところでこの本の成り立ちが述べられていた。
 そもそも甲斐大策さんの絵は、アフガニスタンで活躍する中村医師を支援するペシャワール会の会報の表紙に載せられており、この本の中の絵は、今までの会報に載った絵であり、その絵の由来であるべき物語を集めたのがこの本だった。そして「聖愚者」という言葉は、現地の「ディワナ」という言葉を甲斐さんなりに解釈したものということだった。愛情を持って「おばかさん」といっているとも解釈できる言葉だ。
 ともあれ聖愚者と呼ばれているのは、アフガンの庶民の生きざまそのものだ。英国、ソ連アメリカと、侵略なのか援助なのか似非テロ対策なのか、よく分からない外国軍の攻撃と、支援と言う名の外国の商売の中で翻弄されながら、アフガンの庶民は先祖から伝わる自分たちの生き方を守ろうとしている。
 素朴な人達。どこかノスタルジーも感じる生きざま。今の我々の便利さと豊かさとはかけ離れたところで暮らしている人達。そういう人達が命をつないでゆけるように、中村医師はアフガニスタンで頑張っている。中村さんも、甲斐さんもここの人達をこよなく愛している。