天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

満州国演義−船戸与一

 満州について書かれたものは、以前「満州国物語」という本を読んでいる。8年ほど前になるか。現在たまった本の整理をしているところだが、「満州国物語(上・下)」は処分されずに書棚に生き残っている。これは、満州国に生きた中国人側からの実情を記したものだが、今回読んだのは、日本人側の視点。
 友人が是非読めと手渡してくれた船戸与一氏の「満州国演義」全9巻だ。

 船戸与一氏が癌を押して書き上げたライフワークだ。まずもっての感想としては、日本人全員に読んでもらいたいということ。つまり、我々は満州国という国が存在したことについて、近代史の歴史教育として満足に教わっていない。
 満州国というのが、日本にとってどういうことだったのか、中国にとって、そこにもともと暮らしていた人たちにとってどういうことだったのか。当時の各国の情勢がどうだったのか、この本はかなりの臨場感をもって伝えてくれる。
 日本人の立場であるが、主人公を4兄弟とすることで、四つの異なった立場で満州事変から敗戦に至るまでの様子を生々しく伝えてくれる。ここまで調べ上げるのは相当の時間と体力が必要であったろう。最後の9巻の後ろには、すごい量の参考文献が記されている。
 読んでいて感じたのは、戦争を拡大していった政治判断のまずさ。当時の政治家たちにはまっとうな人たちもいる中で、軸足の置き方がずれている人が権力の座に就くとマズイ判断を誰もストップすることができないということ。これが今の日本とダブって見える。どうしてまだ終わっていない原発事故のあと片付けがありながら、「コントロールされている」という偽りを述べて、原発を再稼働させたり、他国に売り込んだり、垂れ流しの放射性物質があるなかでオリンピックを誘致したりしている。
 長いものには巻かれろという日本人の性癖が、永井荷風によって指摘されているが、それではまずかったことが満州国の盛衰の流れを知ることで分かるはずだ。
 日本は、植民地化されないために、拡大政策を取って、身の丈以上のことを企てようとし、あるいは自国のことだけを考えた自己中の大東亜共栄圏を実現しようとした。それではまずかったという反省が今の政治にはない。平和を維持してくることができた憲法を覆して、何をしようというのか。
 歴史に学ぶことのできない、知性に欠けた政治家は早く退場させなくては。