天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

胡弓よ、わが思いを語れ 楊興新 

 どうしてこの本を見つけたか忘れたが、二胡の本らしいので読んでみた。写真が二胡だが、タイトルは胡弓とかいてある。胡弓という名称は、前にも書いたが日本の楽器で越中富山の八尾おわら節で演奏されるもの、またはこういう東洋の擦弦楽器の総称として使われるが、二胡のことをこう呼ぶ人もいる。

 この本が出たのが1994年で20年以上も前なので、当時は二胡では日本人がわかりにくいと思って胡弓という名称を使ったのだろう、と思ったが、この楊さんという人は三弦の板胡を作っているので二胡も含めた総称を意味しているとも言える。
 1987年に二胡を一本持って来日してから、日本で二胡の演奏と指導をする人になった。日本に二胡を広めた草分のような人と言える。そう言ってしまえば簡単だが、日本に来るまでが大変な経験をしている。ご存知文化大革命で大変な思いを経験した人だ。
 帯に<文革>の嵐の中で翻弄された、わが青春。文化大革命というかつてない混乱の中で、家を追われ、差別され、農村へ”下放”される。来日6年。胡弓の若き名手が綴った、その生い立ち、家族、文革、迫害、愛、そして復活。激しく、哀しく、優しく、楊さんの胡弓の音色がそのまま文章になった。しかも、中国現代史になっている。と永六輔さんが書いている。これで十分本の説明がされている。テレビ番組にもなったらしい。本人の墨書きのサイン本だった。
 この説明にあるように、二胡のことよりも文化大革命がどんなものだったかを証言する本といったほうがいいかもしれない。二胡だろうと胡弓だろうと、名前はともかくこういう文化人はとんでもない迫害を受け、多くは命を失った。楊さん自身も一度は自殺未遂の経験がある。彼は、仏教家で人格者の父親を知らずに育った。父親は20年も牢屋につながれていた。国家の意に沿わない人物としてそのような扱いを受けた。母親が苦労して3人の兄弟を育てた。
 毛沢東の死後、四人組が捕まって、生きて名誉回復がされたのがせめてもの慰めだろう。
 それにしても、来日6年では日本語もままならないと思うのに、よくこういう本が書けたと思ったら、そこはちゃんと良き協力者がいた。訳者の江尻敬子という人が手配したらしい。
 で、今はこの人はどうしているのだろうと思ったら、日本二胡学院という教室と、ヤン企画という事務所を経営して二胡で日本に根付いている。4月16日には日経ホールでコンサートもあるらしい。
http://www.yang-p.co.jp/
http://ameblo.jp/yangxingxin-blog/entry-12073461327.html
 同じ二胡奏者でも、私の先生は改革開放以降に生まれて育った現代っ子。音楽的には二胡でジャズもやってしまう。自分は行きがかり上、自分の先生の協力者兼生徒として頑張る所存。