天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

おわらの恋歌 横田庄一郎

 「胡弓の謎を追って」という副題がついたこの本。二胡のことが書いた本は無いかとブックオフで見ていてみつけた。

 二胡のことを胡弓という人もいるので、これは一体なにが書かれているのかと思った次第だが、間違いなく二胡ではなく日本の胡弓について書かれていた。「胡弓」という言葉は、弓で弾く二胡のような楽器を総称する場合もあるが、この本では厳密に、胡弓と二胡とそれに似た沖縄の三線(さんしん)と三味線、蛇皮線などなど、どれもごちゃ混ぜにしていないで、それぞれのルーツを考証しながら、日本の胡弓は何かを追求している。
 胡弓といえば、越中富山は八尾のおわら節。毎年夏に「風の盆」という夏祭りが三日間行われるが、これを見に県外からも大勢の観光客が訪れる。その目的はおわら節を聞いてその踊りを見ること。おわら節は胡弓が奏でる物悲しいメロディに合わせて歌われる。
 今では、二胡と共演するこんなビデオもある。
https://www.youtube.com/watch?v=W0VCQDYcaiE
 しかし、胡弓のルーツは二胡ではなく戦国時代に伝わった西洋の楽器でヴィオラだった。西洋の楽器はキリスト教の禁制とともに排除されたが、庶民の間で形を変えて受け継がれたのがこの胡弓ということだ。ヴィオラと言っても当時のそれは、今のヴィオラそのものではなく、今のヴァイオリンやヴィオラ、チェロのもとになった楽器だ。
 二胡との違いは、弦の数だけではなく二胡の方が二本の弦の間に弓の毛を挟んで演奏するという特徴がある。そういう楽器は二胡独特のものと思っていたら、ベトナムにあった。
http://saisaibatake.ame-zaiku.com/gakki/gakki_zukan_vietnam.html
 ベトナムにはまた様々な民族楽器がある。その中のダン・二ーという種類の楽器は二本弦で弓毛が間にあるのでまるで二胡と同じ構造だ。こちらは場所的に見ても中国伝来の楽器といえよう。
 この本には、ずいぶん細かい考証が書かれているが、要するに胡弓はそのルーツは鎖国前の西洋にあり、庶民の音楽を伝えた二本の民族楽器であること。二胡は今や代表的な中国の民族楽器であるが、胡弓に似た、あるいはそれ以上に美しい音を出す楽器で多くの日本人に愛好されている。
 日本人と中国人は、音楽の嗜好においても似ているということではないか。