ぶっ壊した書棚に残っていた本。いつどこで買い求めたのかもはや定かではないが、帯に「シルクロードを駆け抜けた巨匠たち」とある言葉につられたのだと思う。
イスラム文化のことをあまり知らないのではないか、とのことで師岡カリーマさんがコラムに書いておられて、現代小説を読んでみたが現代すぎて文化という点ではピンとこなかった。その点こちらは随分勉強になった。というか今まで知らなさ過ぎたかもしれない。
著者は加藤九祚氏。これでキュウゾウと読む。自分の父親と同年代の人。中は五つの章と付録がついている
第1章 古代の栄光と悲惨
第2章 ペルシア、イスラム文化の時代
第3章 征服者の時代
第4章 シルクロード文明の精華
終章 北方の巨人の脅威
付録 中央アジア住民のことわざ・格言
各章が、その時代の人物の様子を中心に書かれているので興味深く読めた。最後の付録も面白い。言い伝えなので出典はない。最初の3つだけ紹介する。
〇思い出が残るように生きよ、お前がこの世から去るときに、この世がお前から解放されるのではなくて、お前がこの世から解放されるように生きよ。
〇つらい日々でも大切にせよ、ひとたび去れば、それもまた二度と帰らない。
〇若さもいつの間にか過ぎ去った、越えてきた峠よりも早く。
以降、つらつらと言葉が並ぶが、最も印象的な順に著者がならべたのではないか。
中央アジアといえば、どこを指すのか。現在では次の五つの国。カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン。
以上の五つの国が出来たのはソ連崩壊の時。1917年のロシア革命でソ連ができてそこに取り込まれて以来、1991年まではソヴィエト連邦を構成する地域だった。
1992年にはこの地域をトルキスタンとして1国にする話もあったそうだが、ソ連統治時代の分割のままそれぞれが独立国となっている。
トルキスタンといえば、「東トルキスタン」すなわち新彊ウイグル自治区が隣接している。この本では、中央アジア5か国の文化、言語が共通するものが多いので、1国でありうるとしているが、隣のウイグル地域とも文化的には共通するものが多いに違いない。が本ではそこまで触れていない。
今自分が楽しんでいる二胡という楽器は、そもそもこの地域のものだったらしい。「胡」という語自体が、中国の西の地域を指す言葉だ。胡の国の二弦の楽器が二胡。
ネット上でアゼルバイジャンの人が二胡と同じ楽器があると言ってきた。アゼルバイジャンといえばカスピ海を挟んだトルクメニスタンの対岸の国。まだ西ってわけか。
第3章の征服者の時代は、当然フビライ・ハンのモンゴルがこの地一帯をも征服したことが中心だが、モンゴル後の覇者チムールについても詳しく書かれている。
モンゴルは実に広い地域に攻め入った。インドまで。インドのムガール帝国の「ムガール」は、「モンゴル」から来ている。
この本のおかげで、中央アジアについての認識が深まった。行って見たいが今は旅も出来ない。今のうちに色々勉強するか。
ところで民主主義にとって喫緊の課題はミャンマー。よその国の出来事として傍観はできない。ミャンマー国内では軍に対する抗議デモが続いているらしい。日本に来ているミャンマーの人たちも大使館前に抗議デモをしているらしい。
日本政府ももっとまともな政権なら、きちっとした抗議声明でも出すんだろうが、森の処分もできない政府では期待できない。