天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

上海の長い夜

 前から読みたいと思っていた本。「日本最後の帰還兵」を読んだ流れで読んだと言える。著者であるチェン・ニエン(鄭念)さんの手記だ。

 彼女はいわば中国の昔の知識階級で、ロンドンで英語を身に着け、シェル石油で働いていた。その彼女が、文化大革命のときに「走資派」として、あるいは外国と通じていたスパイの容疑で上海の看守所に6年半も拘留された。その時の様子を釈放されてから書いたものだが、そのような本は当然中国では発行できない。彼女は釈放されてから米国に移って、そこで執筆をし、ベストセラーになった。
 1949年中国共産党が内戦に勝利し、これから共産主義の国づくりをしようというときにわざわざ中国に戻った人たちの仲間だった。シェル石油はもともとは彼女の夫が勤務する会社だったが、夫が亡くなった後で彼女がイギリスからの支配人の秘書的な仕事をするようになった。
 そういう経済的には上流階級だった人たちは、文化大革命では当然標的にされ、彼女も例外ではなく大変な思いをしたわけだ。
 それにしても、彼女の強さに驚く。文化大革命の実態がどんなものだったか実によくわかるが、それ以上に、そんな状況の中で自分自身を堅持し続けた強さはいったいどこから来るのだろうか。彼女がキリスト教徒であったせいかもしれない。
 拷問などで、ありもしないことを自白させられたり、理不尽な扱いを受けて、先々も事実が正される見込みがないことに失望して自殺する人たちが多い中で、最後の帰還兵だった深谷さんやこのチェンさんの強さは何と言ったらいいのだろうか。人間力というのか。
 それにつけても、今の日本はいい国だ。国全体を巻き込んだ、罪のない人たちが権力闘争の道具に使われていた当時の中国に比べると、敗戦国でありながら豊かになる道を歩んできた。それも実は平和憲法に守られていたからではないの?これを反故にしようという今の政権の動きは、日本をまたぞろとんでもない国にしてしまう可能性を含んでいないだろうか。