天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

かわいそうな歴史の国の中国人

 本屋に平積みしてあった本。タイトルが気になって手にした。また中国ネタで売る本だろうとは思ったが、著者の経歴がちゃんとしていたのと、発行日が2014年7月31日と、未来日付だったのでつい買って読んでしまった。最も最新の本だろうと思ったら、元ネタは著者が作成しているケーブルテレビの番組だった。

 テレビ番組の制作者でもあるので、オリジナル本であることは間違いない。テレビ番組の方は「世界史はモンゴル帝国から始まった」と「中国人とは何か」といったものらしい。専門はモンゴル史らしいが、本はやはり中国とタイトルしないと売れないのだろう。
 で、中国蔑視の本かというと、学者だけあって冷静に研究した結果を縷々述べてはいる。が、中国の存在を褒めてはいない。モンゴル史が専門だけあって、日本とモンゴルの関係について、どうして仲がいいのかといったことがよく分かる。
 中国のことをどう書いているかというと、中国と呼ぶ国ができたのはここ100年の話であって中国4000年の歴史など無い、と言いきっている。名称の問題だけでなく、中華民国以前は満人や漢人の王朝があっただけ。王朝というのは、武力を背景とした強い権力を持っていただけで、広い国土を真に統治することなど出来ていなかったのが実情だ。地方の責任者を任命するだけで、任命されたものはその土地で権力をふるうことで集金が可能なのだ。中央はその地方に課税していた。従って、贈収賄などは生活の一部としてあたりまえに行われていた。役人の収入源そのものだった。
 てな調子で中国を暴きたてる。十分に研究した内容と読みやすい文章でスラスラと。特にモンゴル、チベットウイグル自治区と呼ぶ地域に対して、どんなにひどいことが今も行われているか。これについては、事実として受け止めて、中国という国を考える時の材料にすべき内容が書かれている。夫である岡田英弘氏ごや自分の著作の宣伝にもぬかりがない。
 情報としてはとても参考になったが、著者が国粋主義であることは自分とは相容れない。安倍を認めているようだし、かつての日本の侵略行為はアジアの為だったとどうやら本気で思っているらしい。とんでもないことだ。読み終わって、本の帯の写真が憎たらしく見えた。
 隣人である中国の庶民が、格差社会で苦しんでいることをどうするのか、これから平和に共存してゆくにはどうしたらいいのか、そういうことが問題なのであっていくら冷静を装っても、他国を批判するだけで、とんでもない国だから気をつけろ、騙されるなというだけでは何の前進もないと思うがどうだろう。