天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

「月は遥かに」劉慶邦

 雨の日曜日は本を読んで過ごすしかない。中国現代文学第7号に収録されている短編三篇を読んでみた。この冊子のおかげで中国の現代作家を何人か知るようになった。今日読んだうちのひとりの残雪というひとは、これで名前なのだ。初めて見たときは本のタイトルかと見まごうような名前だが、この人は結構沢山の作品が邦訳もされている。
 史鉄生というひとの文章もいくつか読んだ。この人は私と同世代で、足を悪くして車いすの生活ということは知っていたが、2010年末に亡くなっている。文革時代の文化人なので若い頃の苦労は大変だったろうと思われる。
 さて今日は掲題の作品を読んで、著者の劉慶邦という人が庶民派の作家らしいことが分かったので、興味を持った。この作品は、農村から出稼ぎに出ている夫が、仕事で成功して羽振りがよくなり、家に帰らなくなるという話し。四年も帰らないというところから始まり、やっと戻って来たと思ったら他でできた子供を連れて帰ってきた。
 この間のやりとりや、周りの反応などがとても中国っぽい。こういう出来ごとは日本でも無かったことはないと思うが、当事者を含めて一連のやりとりや反応が、たくましい中国庶民の生きざまのように見える。
 この出稼ぎ男は、炭鉱労働者から始まって、自分で炭鉱のオーナーになったという設定だが、自分で努力して金持ちになったのだからおめかけさんのひとりくらい持つことに何のてらいも無いという倫理観だ。そこのところが、無自覚な成金的だが、いかにもありそうな会話のやりとり。著者は勿論そういうのをよしとしているのではなく、あきれた庶民、どこにでもある悲しい現実として、庶民生活を切り取っている。話の結末は妻の方から離婚を申し出るところで終わる。
 中国の小説は、中国ならではの環境を踏まえて読むと何とも言えない独特の哀愁とか味わいが感じられる。