天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

何日君再来物語 中薗英助

 「何日君再来」というのは、テレサテンの歌った歌でカラオケにも収録されている歌、というのが最近の説明。実は李香蘭渡辺はま子が歌った歌だということは、ちょっとした訳知りの人なら知っている。更に、この歌は中国から嫌われている歌だという人もいる。夜来香も同様の扱いという評価もある。

 本当のところどうなんだ、ということを追及したのがこの本。この本を読んだきっかけは、中国映画「漂亮妈妈」という中国映画のことを書いたときに、中国映画史の解説もあったが、それはこの本がもとになっていいるのではとstantsiya_iriyaさんからコメントがあったので、それはいったいどんな本かと思って読んでみた。
http://d.hatena.ne.jp/mm3493/20151117#1447773703
 この歌がなぜ中国から嫌われていると言われていたか、というと何日君再来の「君」というのが誰のことかを問題にしていた。これを台湾に去った蒋介石と見立てて、いつ戻ってくるのかと待ち望む歌であるとして中国共産党関係者から排斥されていた。実際には、「孤島天堂」という1930年代の上海映画の映画挿入歌だった。それを歌ったのは周璇という女性歌手だった。この人は孤児で、その歌声の才能のために売れっ子になっていた時期もあったが、周りの思惑に振り回されて生涯恵まれずに、若くして世を去った。
 各国の列強が中国に来て、さらに日本が中国侵略中に上海の外国人居留地という特殊な環境の中で翻弄され、苦労して生きていた人々の様子を知ることもできる。映画史的な部分よりもそちらのほうがおもしろかった。
 著者は、この歌の作者を探し求めてついに突き止めるのだが、その人も文化大革命のために不運な障害を送っていた。
 文化大革命という大迷惑な政策ならぬ権力闘争のために、有能な知識人や芸術家、文化人が排斥されてしまった。その時代の名残的な部分が匂う内容だった。本は20年以上前に出たものだが、書かれている事実に変わりはない。
 中国にしろ、日本にしろ自由な文化や芸術が戦争や権力闘争の犠牲になるようなことは二度と無い社会でありたいものだ。