天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

オッサンと過ごした日々

 家内の友人が、「姉さんが本出したので読んでみて」と送ってくれた本。文芸春秋から自費出版とのこと。タイトルから推測できるように、オッサンを偲んで書いた本。先日、司馬さんの追悼文を一気にいくつか読んで感想を書いたが、こちもまさしく追悼本といえる。
 実際には、筆者が参加している同人会に投稿した22偏の文章が収録されている。出版日が平成25年6月12日とあり、この日は著者のご主人のオッサンが亡くなってちょうど2年の命日にあたる。そういう日に因んで本を出すあたり、オッサンへの思いの深さが感じられる。
 読んでみて素敵な本という感じがした。身近な人を亡くした本なのに暗さが無い。オッサン自身が何事にもポジティヴな人だったので、長年連れ添ってすえにそういうところが著者にも移っているのかもしれない。夫婦は似てくるという。ある意味、似てこないと、即ち同じベクトルにならないと一緒にいられないのかもしれない。

 オッサンが亡くなった直接の原因は癌だが、もともと腎臓が悪くて人工透析をしていた人だ。運よく移植手術ができたというのだが、移植された臓器を保つには免疫力を抑える薬を飲むらしい。その結果、癌などにたいする抵抗力が弱まってしまうのだ。
 癌細胞というのは、誰にでも出来てくるもので、体の抵抗力があるうちはその癌細胞を排除することができるが、そうでないと発病してしまう。ということは孔子学院の呼吸法講座で教わった。
 この方は、腎臓移植後の4年間を人工透析なしの生活を楽しむことができた。この間、夫婦で船の旅を楽しんだ様子も書かれている。人工透析と言えば、自分の母親もこれを7年やっていた。人工透析というのは、血液を人工的に濾過するものだが、老廃物と同時に栄養素も吸い取られるので体力が次第になくなる。そう本人も話していた。その結果血管も弱くなったのか、母の場合脳の血管が切れたのが直接の死因だった。今年、自分もそうして亡くなった母の年齢になる。ここから先は余生のようなもの。
 話を本に戻す。本の書きぶりは名古屋調である。名古屋調とは早い話が名古屋弁の連発であり、かつ名古屋人の生態を楽しく書き表している。名古屋人の生態とは、筆者の場合三姉妹の長女だが、自ら「強欲、欲張り、ケチ」な三姉妹と称しているごとく、節約家とか倹約家といえる。
 他人事のような言い方をしたが、ウチにも名古屋人が一人いるので様子がよく分かる。しかしウチの場合は東京暮らしが長くなったせいか、かなり金銭感覚がおおらかになっているように思える。
 収録されている22のエッセイは、2006年から2013年までに書かれたものだが、この間東日本大震災が起きており、オッサンの癌治療も福島の病院であったため、少なからず影響を受け被災地近くの様子を見ている印象も含まれている。
 誠実な生きざまを、こうした堅苦しくない文章で描く筆者はなかなかの書き手と見た。今は四国のお遍路さんをやっているようだが、出あう人々や目にする生きざまなどを記すと面白いものになると思う。果たして第二弾はあるか。