Family Ties by Danielle Steel
日本語で言えば、「家族の絆」ということになるだろうか。ダニエルの最近の著作。
表紙の写真は、巣の中に玉子が三つ入っている。これは、ストーリーに三人の兄弟姉妹が出てくることにちなんでいるようだ。家族といいながら、物語はリッチで幸せな夫婦が飛行機事故で亡くなってしまうところから始まる。家で留守番をしていた三人の子どもが残される。長女が当時12歳、次が男子で末っ子が女の子。
その三人を母親の妹のアニーが引き取って育てる。当時アニーには恋人もいたが、いきなり三人の母親になった彼女は恋人とも別れ、仕事と子育てに追われて過ごす。
16年経った頃。長女のLizはファッション雑誌のモデルとして世界を飛び回るまでに成長した。男の子Tedと末っ子のKatieはまだ学生。
こういうシチュエイションで描かれているのは、三人の子供たちがアニーとすっかり四人の家族として育ってきたが、そろそろ大人として巣立ってゆく時期。そういう中での人間模様だ。
三人の子どもたちは、それぞれ彼氏や彼女が出来て色々な出来事が展開する。アニーは心配でならないが、彼女の友人は「もう子どもたちは自分たちで失敗も積み重ねて成長してゆくのだから、もう見ているしかない。それよりも自分のことを考えなさい。」とアドバイスをする。
長女Lizは、ほぼ同年輩のフランス人のカメラマンと付き合っていたが、相手の浮気性に逆上して別れ、ひょんなことから知り合った宝石商のイタリア人と大人の交際を始める。
男の子のTedは、大学の女性講師と尋常でない関係になり、妊娠したというので結婚を迫られたが、それがウソであったことを発見して、もとのまともな学生に戻る。
末っ子のKatieの経験が色々考えるところがあった。彼女は美術関係志望の学生で、衣装も化粧も飛んでいる。ボーイフレンドはまだ若い研究生のイラン人。彼はテヘランの生まれだが、小さい頃に親に連れられてニューヨークに来た。Katieと仲良くなった彼は、自分の生まれ育った故郷をKatieに見せたくて、テヘランに二人で行く。イスラム社会をアメリカ人が訪問すること自体、心配な事である上、イスラムの男がアメリカ人の彼女を連れていることが分かれば、向こうでは大問題になってしまう。アニーや彼の両親の反対を押し切っての旅だった。
ところが向こうでは、父親の兄すなわち彼の叔父さんが後を継いでいるところを訪問したのだが、元々叔父さんは彼の父親がアメリカに行くことに反対をしていた。その息子が帰ってきたので、パスポートを取り上げて、もうアメリカに帰るなという。おまえの居場所はここなのだ。というわけだ。Katieのことは、友達と紹介していたが、彼女であることはそのうちばれてしまう。彼女はアメリカに一人で帰るはめになるところだったが、滞在中にヴィールス性の感染症で倒れてしまう。
これをアニーが救出に出かける。と言っても、アメリカからイランに行くにはVISAも必要だし、簡単な話ではない。彼女が仕事で建設現場を見に行ったときに怪我をし、その時偶然に病院で知り合ったテレビのニュースレポーターとちょうどつき合いはじめた時で、その彼氏が救出に一役買うことになる。
筋書きとしては、それぞれの経験が子どもたちをおとなにしてゆくことと、どうやらアニーも最良のパートナーと出会ってハッピーエンドだが、ダニエルのこの本のテーマとしては次のようなことを読みとった。
人は巡り合わせで色々な人達と出会う。その出逢いや巡り合わせに、逃げずにチャレンジしてみることで成長する。そして困難なときに心を寄せあえる家族がいることは救いだ。その家族とは必ずしも普通の親子でなく、色々な事情で家族になった人達全てが家族だ。家族の良さを感じながら、そこから一人立ちしたい子どもを見守る奥の深さを持ち合わせる。そういう家族っていいのでは。