歳を加える
長野の菩提寺からの便りによると、今年が母の27回忌にあたる。命日は1月31日。もうすぐだ。自分の年齢が母の他界した年齢に近づいている。最近やっと体調が回復基調かと思うと、油断してビールを飲むと咳がぶり返す。DNA的にそろそろヤバイかもしれない。
などと弱気なことを考えていたら、75歳の女性が芥川賞を受賞したというニュースが流れた。黒田夏子さん。早稲田文学の新人賞を受賞した「abさんご」という作品だ。そろそろ本屋さんの店頭に並ぶ頃か。文芸春秋社から1月20日初版として出るらしい。学部は異なるが、学校の先輩でもあり、地味に努力をしてきた人のようなのでご祝儀に1冊買うか。いやいや私などが偉そうに本1冊でご祝儀などというのはおこがましい。最高齢受賞者として話題になったのだから、本はすぐに売れるだろう。努力が報われた人だ。
「報われる」ということはいい。この方のように地道に努力をしてきた人が報われるのはなおいい。高年齢での受賞ということについて、ご本人は「先がないからご褒美だろう」と謙遜しながら、「他にも長年書いていらっしゃる方々への励みになれば」とのこと。しかし、そういう方々が全てこのような形で報われることはない。そこはやはり文学としての評価の問題だろう。この受賞作は、文体やひらがなの多用などという特徴があるとのことで、あくまでも文芸の世界の評価だ。芥川賞だから。
それにしても、読者をひきつける小説を書くということは簡単なことではない。その作業を私より一回り以上年上の方がやってのけている。功成り名遂げた著名な作家が書いたものではない。教師や校正などの仕事を生業としながら、積み上げてきた筆力によるものだ。文学の世界でなくとも、歳にめげず、健康を維持しながら思うところを行う。そういうありかたは、容易なことではない。やはり見習いたい。