天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

11通の手紙 及川淳子

 本をいっぱい断捨離してから、積読本だった在庫を読むことにして、新たに本は買わない。読みたい本は図書館で借りることにする。と決心したが、やはりこれは買わなくちゃという本が次々出てくる。

 話題の新刊本は、図書館に無かったり、あっても皆が借りるので順番待ちが長い。忘れたころに順番が来る。

 ということで、最近のホットな話題、6月4日の天安門事件から30年に絡む本。

 タイトル通り手紙として書かれた一種の書簡文学。のようで、散文詩のようにも見える。作者の及川氏が、獄中で亡くなった劉暁波に思いをはせて、なりすました手紙。「なりすまし」とは表現がよくない。心を一つにした結果出てくる言葉を、彼ならこう書いているだろうと書いた手紙。奥さんの劉霞とも交流をしたうえでの作品。

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 届いたら、一気に読んでしまいそうなので、届いた日に半分読んで楽しみを次の日に残すようにして、でもページも少ないのですぐに読んでしまった。

 11の手紙のあて先は、ある学生、旧友、ある新聞記者、ある歌手、ある弁護士、ある老人、ある母親、若い兵士、あるキリスト者、ある詩人、愛する君へ最後の手紙。

 一つ一つ読んでいくと、書き手(劉暁波)と相手とのつながりと、人間を大切にし、自由の大切さを分かりあっている者どうしの関係、あるいは心を許せる愛する人、といったことが美しい文章で心に迫ってくる。こういう文学は、どうとらえたらいいのだろうと思うと、解説が実に納得のゆく説明をしてくれる。

 解説者は、笠原清志氏。

 天安門事件の時に、戦車の前に立ちはだかった青年と、ノーベル平和賞受賞式で空席だったことに触れた後、「知識人の豊かな精神的地下水脈」として他の地域で自由のために戦った事例をあげ、最後に

「世界を変えてきたのは、いつの時代も、人、ひとりひとりの強い意志と想い、そしてそれを忘れなかった一般の人たちである」と結んでいる。

 最後のページに、世界人権宣言第1条、日本国憲法第21条、中華人民共和国憲法第35条の条文が出ている。いずれも自由を保障するとしている。

 趣旨を同じくする条文が、世界人権宣言では最初にあり、日本国憲法では21番目、中国の憲法では35番目とうのも、何か意味ありげ。

 日本を含めた現状が今のままでいると、これらの条文はパロディになってしまう。

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最後のページ