天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

中国映画「武訓伝」

 久々に現代中国映画上映会に行った。昨日のボクシング観戦と同じ後楽園まで出かけた。「武訓伝」というこの映画は、1950年に発表された作品であるが、毛沢東の批判により上映禁止となった幻の作品と言われている。それが海外で上映され始め、今日はDVD上映に上映者手作りの日本語字幕をつけてくれた。
 内容は、貧しい家に生まれた武七(武訓)は、学校へも行けず、貧しい人たちが字も読めないために、騙されたり搾取されたりするのを見て、物乞いをしながら自分で学校を作ったという話だ。清末の実在の人物であり、見ていると感動を誘う。これが何故毛沢東のお気に召さなかったのかというと、物乞いでお金を集めるということが革命的ではなかったのだ。革命とは常に武力闘争を伴わなくてはいけないらしい。
 実在の人物で、実話であるとすると本当に感動ものだ。清末の役人の腐敗ぶりと、虐げられる農民の貧困状態が映像で生々しいのも貴重なフィルムだ。
 武訓は苦労して三つの学校を建てた。それは貧しい子供たちのためだった。そしてそこに通ってしっかり勉強している子供に「将来何になるのか」と尋ねると、「役人になる」という答えが返って来た。そこで武訓は唖然とする。武訓でなくとも唖然とする。そういうことか。
 日本でも同じだ。貧乏人の子供が苦学して東大に行き、立身出世ともてはやされて、役人になってはいそれまでよ。役人天国でバブルのはじけた社会の庶民は格差拡大。そのなかでいまだに天下り天国でいる。まったく世の中は皮肉なものだ。映画の中の武訓も、最後は皇帝からの褒美も受け取らず、少々やけっぱちになっていたように見えた。
 この皮肉な現実をどうにかするには、どうしたらいいのだろう。やはり教育だろうか。いくら教育を受けても、何のための教育かはき違えているエリートがいる。こういうのに対しては、やはり武訓と道を分かった太平天国の残党のように、武力も必要なのだろうか。
 深い映画だった。