「ブータン、これでいいのだ」
幸福立国として知られるようになったブータンについては、以前大橋照枝さんの本を読んだ。以来興味が深まっていた。昨年は、勤務先の新人女性がブータンに旅行に行った。ブータン料理屋さんが新宿の近くにあることも教えてもらった。
今回「ブータン、これでいいのだ」という本を買って一気に読んでしまった。在庫本を消化するまでは新たに本を買わないと思いながら、今年購入12冊目。これはネットか何かで、糸井重里氏が著者の御手洗さんと対談をしているのを見て、この本は買っておこうと思った。出たての本は、旬のうちに読まなくては、というのですぐに読んだ。本のカバーに糸井さんが「意外と重要な本なのではないかと思う。」とコメントしている。さすがコピーライター、ズバリそうでしょうというのが感想。
著者は若い女性であるが、東大経済学部卒、コンサル会社マッキンゼーを経てブータンに1年滞在をした。それもブータン政府のお招きで、向こうの国家公務員として仕事と生活をしてきた、その経験から書いた本がこれ。見目麗しいエリート女性が上から目線でブータンを書いているのか?と最初は思ったが、そうでもない。あくまでも「重要な本」という評価に同感。
ただ、そういう立場にいたのでブータンの貧困層についてのレポートは無い。
ブータンは、インドと中国に挟まれたヒマラヤの国。公用語が英語で、経済はインドからの支援頼みのところがある。本に書かれているこの国の民族性を見ると、私が感じている中国人の国民性にかなり近い。なのに、中国に向かずにインドを向いている。これは同質の民族性をもつ大国中国に頼ると、そこに同化させられて、国としての独立性を保てなくなってしまう恐れがあるためだという。そんなことまで考えているのか?と思うが、どうも考えているようだ。つまり考えて行動しているリーダーたちがいるのだ。
この国は立憲君主制のブータン王国で、王様がいる。昨年新婚の美人の奥さんと日本に来て話題になった。この人も王家の継承者としてブータン国民の人望は厚い。しかし王様が一人できりもりしているのではなく、国の政策を決めて実行する人たちがいる。大かたが欧米に留学して他国の経済や制度を学んで帰ってきた人たち。そのような人達がこの国のリーダー層となっている。なので英語で会議をしたりすることに何ら抵抗が無いわけだ。
この国が脚光をあびているのは、DNPに代わるGNH(Gross National Hapiness)という概念を打ち出して、先の見えた資本主義に代わるものかと、期待されていることにある。日本でブームになっているのも、どうもおかしいぞ日本!という感覚を持つ人が、ちいさな発展途上カ国の国民がどうして皆自分は幸せと言えるのだろう、何か真似できないものかと思うからだろう。
しかし日本がブータンの真似をできるということはない、とこの本で著者は言う。何故なら、ブータンの人が考える幸せと、日本人が考える幸せとでは明らかに異なるからだ。幸せ感、何を幸せと感じるかの感覚がブータン人と日本人とでは異なっている。個人の幸福(経済的安定と健康など)に眼を向ける日本人と、チベット仏教を信仰するブータンの人々の世界観、人生観とでは自ずと異なる。そういうこともこの本に書いてある。
日本とブータンは、お互いに真似をするのではなく、お互いに学ぶところが色々あるのではないかということだ。
この本は、ハナマル推薦図書。