「戦争しか知らない子供たち」山本芳幸著
この日記のコメントで紹介戴いた本。iireiさんのコメントでした。早速ネットで購入して読んでみて、驚いた。こんな人もいるのだ。
彼は国連で働いていた。まだそうなのかどうかわからない。大学をいくつも出ていて、勉強が好きなんだ。村上龍さんや、坂本龍一さんがお薦めの本。「龍声感冒掲示板」というネットサイトがこの二人と出あうきっかけであり、この本が出るようになったきっかけでもあるらしい。
アフガニスタンで活動といえば、中村医師だ。中村さんの本は、氏の活動を通じてアフガニスタンがどんなところかということが分かる。しかしこちらはより多彩な人々に現地であったり、経験したりしている。滞在期間は中村医師の方が圧倒的に長い。
もう一人、山本敏晴というひとも外務省から現地へ医療活動に行ったひとで、「アフガニスタンに住む彼女からあなたへ」という本を出して、以前この日記にも紹介した。山本つながりというわけでもないだろうが、芳幸さんと敏晴さんは若干交流がありそうだ。
今回はこの本のこと。「戦争しか知らない子供たち」というタイトルは、昔、若かりし頃に歌った「戦争を知らない子供たち」という歌を連想させる。と思ったらどうやらこれをもじったタイトルのようだ。もともとこの地は、その昔、大英帝国がインドへ出るときにここを通過し征服して行った土地柄。そして1979年にソ連がここに侵攻した。以来現在まで戦乱が続いていると言える。ソ連が撤退した後はアメリカがテロの巣窟として攻撃を仕掛ける。
1979年に生まれた子供は、今年で33歳になる。その間戦争だらけであったので、それ以降に生まれた子供たちは、皆戦争しか知らない。そして自分たちもいづれ銃を持って外敵と戦い、死んでゆくものと思いこんで生きている。この本は、そういう実情を現地で見て、感じたレポートだ。
国連勤務ということもあり、他の国々から来ている人達との接触の様子や、現地採用の女性職員との通信だけのやりとりなど、生々しい。氏が身も心も入り込んで活動している様子がうかがえる。この地に生まれ、育った人たちに心を寄せていることがうかがえる。
ちょうど2001年の秋、すなわち米国で同時多発テロが起きた年までのことが書かれている。このニューヨークのテロ事件は世界が驚いた出来事だったが、かの地においてはそれ以前から外敵に対する戦いがずっと続いていた。この頃に起きた旱魃も、中村医師の本にもレポートされており、その旱魃がきっかけで中村医師は井戸掘りや水路建設を始めたのだが、旱魃自体のすさまじい影響はこちらのほうにより臨場感をもって報告されている。
著者山本芳幸氏と中村哲医師は、この地の人々を有るがままに受け入れ、尊重していると言う点で共通している。