天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

Southern Lights

 Danielle Steelの小説。題名を直訳すると「南の明り」となるか。これだけでは南が意味することが、何のことか分からない。一言で説明するならば、南北戦争の「南」とでも言えるだろうか。地理的に米国南部地方と言えばそれまでだが、「南」の一言にその地域の歴史、文化、生活習慣が含まれている。
 主人公のAlexaは、New Yorkの地方検事をしている。州をまたがって各地で凶悪犯罪を起こした犯人の罪を立証する仕事に取り掛かったところから物語は始まる。18件のレイプ殺人という犯罪の証跡がわずかしかなく、弁護士側の主張は、未解決の殺人事件を皆この犯人一人のせいに仕立て上げてしまう恐れがあり、冤罪であるという。
 ダニエル・スチールにしては珍しく、推理物で犯罪の立証をめぐってどんでん返しが主題のストーリー展開かと思いきや、そうではなかった。南部地方がどのようなところかということが主題であった。
 拘束されてるはずの犯人の調査中に、Alexaの年頃の娘あてに脅迫状が舞い込む。外にいる仲間の仕業に違いないと思い、娘を南部に避難させる。南部地方の都市チャールストンには10年前に別れた夫の家族がいる。ニューヨークを離れて預けられる知人はそこしかなかったのだ。娘、サバンナの父親の家である。
 南部地方は、昔のプランテーション農業の香りが今も色濃く残っている。南北戦争に負けたとはいえ、当時南部のために勇敢に戦った(?)将軍たちの伝説が今も語り伝えられているらしい。そういう富豪の様子は、映画「風と共に去りぬ」に描かれている。そういう家のハンサムな男性と、Alexaはと恋に落ちて結婚した。その男性の妻が他の男のところに行ってしまった後の、後妻だった。逃げた先妻の息子二人を育てつつ、娘サバンナを生む。
 しかし、その妻は行った先の夫と死別すると、元のサヤに収まろうと画策し、成功する。Alexaは娘を連れて追い出される羽目になり、ニューヨークに帰る。そこから法律学校に行き、今の仕事につく。10年前のことだ。
 彼の妻は南部の出身、Alexaは元々ニューヨークから来た娘。南部は閉鎖的な社会であり、身内を大事にする風習の中でAlexaは締め出された。夫もAlexaを愛していたにも関わらず、自分の母親と組んだ元妻の陰謀におとなしく従ったのだった。
 そういう過去のゆえに、Alexaは娘をそこに避難させるにしても、娘がその南部のねっとりとした居心地の良さの中に埋もれてしまうことを心配した。自分がかつてそうであったことがあり、そこから締め出された辛い経験を娘にはさせたくないと思ったのだった。
 色々と話は続き、結末はいつもの通りハッピーエンド。娘のサバンナの祖母である父親の母が、サバンナを見て、昔その母であるAlexaを追い出したことを大いに反省する。そのあたりから、南部の社会がAlexa親子を受け入れ、親子もまた元に戻りはしないものの、南との交流を受け入れる。娘はボーイフレンドを見つけ、Alexaもチャールストン出身の上院議員に一目ぼれをされて結婚の申し込みを受ける。お決まりのハッピーエンドであり、絵にかいたような小説であるにも関わらず、ついまた読んでしまう。