天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

吉川英治「三国志」

 全巻8冊に及ぶ吉川「三国志」を完読。吉川英治氏による三国志は、諸葛孔明の死で終わる。が、元本の「三国志演義」はまだ続くようだ。小説を終わらせた後の、篇外余禄という形で氏自身がその後のことなどを説明しており、最後の解説文によっても三国志のことが色々分かる。
 正史三国志があり、その講談本とも言える三国志演義がある。書き手により色々な逸話が付けたされたり、工夫されたりしている。正史と呼ぶ本でさえ、史実だけでなく古い逸話の流用があるらしい。
 よって、吉川版「三国志」というのはそれらの三国志という書の歴史を踏まえた、日本人向けの「三国志」ということができる。
 とすれば、その後に書かれた三国志。例えば北方謙三氏による「三国志」もそれなりに、吉川英治氏の時代とは異なった、現代人向けの「三国志」になっているということなのだろう。かといって、別に三国志にはまったわけではないので、次々と色々な三国志を読むことはしない。吉川英治氏の「三国志」は、日本人の庶民向けの初の三国志ではないかと思う。これを読み終えたので、やっと自分も「三国志知ってるぞ」というふりのできる人間になったような気がする。
 色々な逸話や、故事成語が豊富な本だ。その出所みたいなのを知ってるぞという顔ができる。諸葛孔明の子を戒める書についてもちらっと出ていた。
 ところで、元々の正史三国志はその書のタイトルは「三国志」ではなく「魏志」とか「蜀志」とか、三国それぞれの歴史書であった。その「魏志」と言えば、その中に書かれている倭人の話が「魏志倭人伝」だ。その当時の日本人がどうだったのかが書かれているというわけだ。これは読んでみる気になる。
 そして「蜀志」の中に「諸葛亮伝」があるという。そうだったのか三国志!という感じだ。自称中国通としている自分が、やっとそのいにしえの中国、今の中国人もだれもが知っている三国志の世界を垣間見た気がする。