[二胡] 二泉映月
「二泉映月」と言えば、二胡弾きならだれでも知っている。二胡弾きでなくとも中国人なら大抵知っている、二胡の名曲。そのことについて書かれた本を読んだ。
これは、広州に行っていた頃、行くと時々見に行っていた大きな本屋さんで見つけた本。建物丸ごと本屋になっていて、音楽関係のコーナーで二胡の譜面をよく買っていた。その時にたまたま見つけて買っておいた。
今度この曲を正式に習おうとおもうので、せっかく持っている本だから予備知識に読んでみた。無論中国語で書かれている。が、難しい専門書ではなく、伝記のようなものなので、細かいところを気にしないで筋を読むくらいなら読める。
伝記と書いたのは、この曲を作ったひとの伝記と言う意味で、知る人ぞ知る阿炳(アービン)のこと。この名前は通称で、本名は華彦鈞というそう。道士の息子に生まれた。道士と言うのは道教の坊さんで、中国の民間宗教の導き役。日本言えば神主さんみたいなものか。ただ日本の神社に比べると、少林寺のように活発なところであったろう。
阿炳は、そういうところで育ち、生涯そういった環境に身を置いたようだ。が、眼の病を患い、35歳で完全に失明した。それからは、連れ合いに導かれて路上パフォーマンスをして暮らす。彼が活動した時代は日中戦争の時代。パフォーマンスは、二胡に琵琶に時事問題の弾き語り。この二胡と琵琶の演奏が卓越していた。
目が見えないので、二胡で弾く曲は自作の物が中心。それも覚えている曲を弾くたびに改良していった。
彼の二胡の音が有名になったころ、それを録音して残そうと言うことになった。もう年老いたタイミングだったろうでが、その様子が本の中に描かれている。
録音と言っても、今のような器械ではない。この写真のような器械で、今聞けば雑音が混じるものだが、この音から当時の音楽家が譜面を起こした。
その譜面のおかげで、今我々も「二泉映月」と言う曲を弾くことができる。この「二泉映月」というタイトルも、この録音時点で何か題名をつけようということで、周りの人たちが考えた。二泉というのは、アービンが住んでいた近くに小さな池のような泉があったその名前だ。「天下第二泉」とされる泉は今も残っている。そこに月が映っているという意味だが、彼の人生、即ち当時の中国人の生きづらさのようなものを音色で表現している。
阿炳は、1950年に病没している。この曲は、録音と譜面が残ったおかげで、そのあといろいろな音楽家が評価して演奏している。その中に日本の小澤征爾もいる。オーケストラで演奏している。
さて、こうした曲の背景を知って、どういう演奏ができるか。検定試験が終わったらこの曲に入る。譜面を暗譜するくらいには弾きこなしたい。
暗譜はなかなか厳しい。今練習している検定用の曲2題もほとんど覚えてはいるが、眼で数字譜を見ることで間違いなくその音を出すよう手に指令が行く。見ないで手が動くままに弾くと、万が一似た個所で勘違いをしないとも限らない。手が覚えていても譜面は確認のために置いとく。大舞台のピアノ弾きもそういうことじゃないかと思う。レベルが違うけど、同じ曲を弾いても弾き手の表現力の違いが出る。そこが難しいけど精進のしがいがあるところでもある。と思う。レベル違うけど。
はやく検定を終えて、この曲に取り組みたい。