沖縄を世界軍縮の拠点に 辺野古を止める構想力
<岩波ブックレットNo,1022>
この本は、昨年5月に開催されたシンポジウム「沖縄対外問題研究会20周年記念シンポジウム・辺野古を止める構想力:変わりゆくアジアの中で沖縄はどうするのか」で、論じられた内容をまとまたもの。
表紙の5人の論説は以下の通り。
基調講演:豊下樽彦
「軍事の要石」からの脱却を求めてー米中対立の狭間の沖縄
報告1:北上田毅
軟弱基盤の意味するところ
報告2:吉川秀樹
環境問題でつながる沖縄と世界 成果と課題
報告3:大城尚子
海洋保護区と米軍基地ーディエゴガルシアを事例に
報告4:豊田裕基子
トランプのアメリカ
紙面的には基調講演が半分近く。本のサブタイトルにある「辺野古を止める構想力」とある「構想力」とは何か。
民意を無視して、強引に進められている辺野古新基地のための埋め立て工事。これを止めるための具体的な進め方のことだ。基調講演で、沖縄についてのこれまでの経緯を振り返ったのち、辺野古埋め立てが無意味なことで、これを辞めさせようという当面の問題を、その一点だけでなく、沖縄を世界の軍縮の拠点にしようという構想(提案)が述べられている。
具体的には、沖縄に「東アジア軍縮センター」を設置することを国連に呼びかける。国連は2018年に「軍縮アジェンダ」を打ち出している。この推進拠点として沖縄を提案する。未来に向けて平和への過程で踏むべき軍縮。これを沖縄だけの問題にしないで、東アジア全体の平和に向けた話し合いの場にしてゆく。となればそこに基地など新設することは論外。
報告1では、すでに広く報道されている辺野古の軟弱基盤の問題が具体的に説明されていて、今の工事では先々地盤沈下を防ぐ補修工事をし続けなくてはならないことになることを指摘し、工事推進の合理性を否定している。
報告2は、米国の法廷で進められている「ジュゴン訴訟」について説明されている。これは名称だけであまり認識が無かったが、これは米国の「国家歴史保存法」という法律が米国外の文化資産などにも適用されることになったのを受け、国防総省が基地建設にあたってジュゴンの保護など自然遺産のについて「考慮の手続き」をしているかどうかを争うもの。当初提訴されてから15年続いている。これは正義の行われない日本ではなく、米国の正義に訴える動きだ。今後の推移を見守ることにしたい。
報告3は、インド洋に浮かぶ英領の米軍基地について、そこが環礁であり、地元住民を他へ移住させて基地化している。強制的に移住させられて、自分たちの集落を構成する土地を奪われた状態は沖縄の嘉手納基地に住んでいた人たちの問題と共通する。インド洋のチャゴス人と呼ばれる人たちを支援することで、沖縄の問題を世界共通の問題としてゆくことができる。
報告4は、簡単に、有体にいえば、米国のトランプ大統領のご機嫌取りの政策は意味がなくなるので、早くやめたらどうか。ということだろう。
いずれもしっかりした内容になっている。
東アジアに米軍基地を置く必要性が、北朝鮮だ中国だと危機をあおっていることにあるが、まずその認識を改める必要がある。誰がというと日本の政権であるが、今の体制では全く期待できない。これだけ論理的に経済的にも不合理な基地建設を止めるのは、まずは政権交代が必要。