天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

ミトコンドリアのちから 瀬名秀明&太田成男

 とてもいい本。

 ミトコンドリアについては、「ミトコンドリア細胞呼吸法」という講座でミトコンドリアの働きについて聞き、実際にミトコンドリアを活性化させる呼吸法を習っていたことから、おおよそのことは知っているつもりだった。

 この本は、その働きのことと酸素との関係について、わかりやすく説明をしてくれる。「わかりやすく」というのは、書く側のスタンスであって、実際に分かりやすいかどうかは読み手の知識レベルによる。

 自分が分かりやすいと思ったのは、文章が平易で読みやすいということ。事柄の背景にさかのぼって、歴史的な過去の経緯まで説明があること、科学的に解明されている最新状況が述べられていること、などが理由であり、科学的な記載内容をすべて理解できたわけではない。にも拘わらず、読み進めたのは文章の書きぶりと、本の構成によるのだと思う。

 特に後段になってとても大事なことが書いてある。と思った。最後までよかった。

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 前置きはこれくらいにして、著者である太田成男氏は現役の研究者で、瀬名秀明氏はSF作家、ホラー作家の肩書をもつ。デビュー作が「パラサイト・イヴ」。ミトコンドリアを題材にしたホラー映画にもなっている。ま、物書きが参加しているので読み物風になっているのだろう。ともあれ中身。

 ミトコンドリアは、細胞小器官と言われ、細胞の一部のように言われているが、実は酸素を吸収してエネルギーを作る微生物。16億年くらい前に酸素なしで生存していた他の生物と合体してから進化を続けて人になった。なので、

「私たちの身体は、さまざまなレベルの協調によって成り立っている」そうだ。

「地球は生物で満ちており、私たちもその一部だ。」すなわち、地球レベルでも協調があることで共存ができている。自分の身体が自然の、地球の一部だということが確認できる。

 本来有害な酸素をエネルギーに変えるミトコンドリアと合体した生物を「真核生物」と呼ぶらしい。細胞核に遺伝子情報を持つDNAがあるが、ミトコンドリアにも遺伝子情報が一部あるらしい。遺伝子情報を持ち合うことで協調が成り立つのだろうか。

 そのミトコンドリアに異常をきたすと、ミトコンドリア病と呼ばれる症状になる。が、ミトコンドリア内のDNA遺伝子のどこに異常が起きるかで症状が異なるため、治療が難しく、原因追求から治療まで個々のオーダーメイドになるのが現状らしい。

 「異変を見て正常が見えてくるその過程で、私たちは社会のひずみにも気づくことができる。」この言葉は深い。

 「人間にはそのような『知』が備わっており、それを発揮することが科学」とある。なるへそ。備わっているはずの「知」を発揮どころか、破棄して政治家やっている奴がいる。そういう細胞はアポトーシスされなくては。