天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

時を超える旅 平山郁夫

シルクロードに取材をして多くの作品を残した平山郁夫氏。この本は、氏がどのような思いで旅をし、絵を残したのかが簡潔に自身の文章で書かれている。1981年1月に初版で出された本だ。Bookoffでたまたま見つけて買っておいた本。

記述はヨーロッパから始まり、中近東、アジア、そして日本という具合に、遠くの場所から次第に日本に近づき、最後は京都で終わる。心憎い構成になっている。
これだけの地域を巡り歩いて絵を描いた人なので、意識は世界を向いていて、一種の地球人。悠久の旅へのいざないという最初の章で、
「日本は分母も分子も日本で見ることが多いので、注意しないとナショナリズムや国粋的な考えに陥りがちである。もしアジアを分母に日本が分子と見れば対等に考えることができる。こうして中国やインドを含めた東洋文化の上に日本が乗っていると考えれば、また違う目で見ることができる。」と書いている。これで、平山氏のスタンスがわかる。
氏は、15歳の時に広島で被爆している。原爆がB29から落下傘のように落とされた姿を見て、同僚に知らせに小屋に戻った瞬間に爆発した。ちょっとしたタイミングで命を落とさずに済んだ。そういうすさまじい経験を持った方なので、平和への思いはことさら強い。

「これからは自分のところだけがいいというのではなく、宗教、文化、科学技術においても、みんなでともに生きることを工夫していかないといけないのではにだろうか。」まさにその通り。ズバリそうでしょう。しかるに国会では戦争をする国にするための法案を論議している。
本には、氏の筆による世界遺産を描いた代表的な作品も載せられている。遺跡の絵が多い中広島の原爆ドームも載っている。戦争をしないために世界遺産に指定された。しかるに国会では・・・。
語られている日本は、この広島のドームと対照的な宮島の厳島神社。そして奈良から京都。
「日本は奈良時代の7,8世紀に、中国から文化を導入し、日本文化の礎を築いた。奈良時代の寺院建築を見ると、中国様式を正確に学んでいる。伽藍配置なども、典型的な中国様式である。・・・これが8世紀末になると、奈良平城京から、京都平安京に遷都した。平安時代になると、漢字からかな文字をつくり、和歌を作った。・・・日本文化が始まった。」
最後は、この本で紹介された世界遺産を皆で大切に守ってゆっことが世界平和につながると結んでいる。平和を愛する文化人としての切なる願いだ。