天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

普通語 莫言

 今やノーベル賞作家となった莫言。「普通語」と題する小説を書いている。
 普通語とはプートンホアと読んで、我々中国語学習者が学ぶ対象となる言語だ。中国は広く、方言が色々あると言っても、今やこの普通語を学んでおけば大抵の場所で通じるようになった。
 普通語とは、日本で言えば標準語のことだ。テレビ、ラジオではアナウンサーは標準語をしゃべり、全国でこの放送を聞いている。それでも地方にゆくと、自分たちが話す言葉は相変わらず訛りのある方言だったりする。当然中国でも同じことが起きていて、広いだけにその程度が激しい。
 中国の山里深い農村では、ローカルな方言で話すのが当たり前。標準語を話そうものならあいつは気どっているとバカにされる。そういう村から、頑張って街の大学に合格した娘がいた。こういう場合は、農村戸籍から都市戸籍に移ることができ、行った先で仕事を探して街の人間になるのが普通だ。しかしこの娘は村に帰って教師になる道を選んだ。そこで普通語を子どもたちにしっかり教えようという志に燃えていた。
 村の人達は彼女を評価したが、妬む人間もいた。それまで村の学校で代用教員の資格で長年方言で教えてきた人間だ。その姪にあたる小青という娘は、普通語を教える新任女教師の小扁を大層尊敬していたが、叔父があまりにひどい言葉で先生の陰口を言うのでいたたまれなかったのだろう、ある時農薬を飲んで自殺をしてしまった。
 後から小青が書いたという詩が見つかったと届があった。
「あたしは田舎者 なんで標準語なの 田舎言葉丸出しでも 皇帝を引きずり降ろせる 思想を赤くさえすれば いつもどおり革命ができる」というものだった。
 小青は、人一倍普通語を熱心に学んでいたのにこんな詩を書くわけがないと人々は疑った。しかし、女教師は取り調べを受け、普通語の教育は必要ないということになった。このことで今度は小扁がおかしくなってしまった。なんともやるせない話ではあるが、今やノーベル賞作家となった莫言の作品だ。中国農村の実態もしくは中国人の性癖を表現している。