天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

中国映画「紅いコーリャン」

 ノーベル賞作家莫言の原作の映画化。時代は日中戦争の初期。場所は山東省で、文字通り紅いコーリャンからお酒を作る酒蔵を取り巻く人々の話。
 コーリャンから作る中国のお酒はバイチュウ(白酒)であるが、紅いコーリャンから作ると少し紅いバイチュウができるらしい。映像からそのように見えた。映画の中の解説によると、当時そのあたりはコーリャンが自生している地域だった。広い中国、そういう場所もあったのだ。たぶんそこにある、取り放題のコーリャンを原料にしてお酒を作るので、材料代タダの安いお酒ができたことだろう。
 話のはじめの方は、そこの酒蔵に嫁いだ主人公の苦労話か、と思ったらそうではなく抗日の物語だった。
 貧乏な家の娘が、主人がらい病を患っている酒蔵にわずかなお金で嫁がされる。その婚礼のときの花嫁の輿の担ぎ手の一人が、横恋慕して主人を亡きものにし、その酒蔵に居座る。映画の語り手はその男と嫁が自分の祖父と祖母であると語る。地元ヤクザのような連中との駆け引きもある。ずいぶん乱暴な成り行きではあるが、元々貧しい庶民の生き様としては、多かれ少なかれこういうことは有ったのだろう。
 話は、その婚礼から9年後。日本軍がこの土地にもやってきた。そこで日本軍はご多分にもれず、残虐非道なふるまいを行う。その日本軍に逆らったとして捉えられたものが二人。やくざの親分と、以前酒蔵にいた古株の労働者、実は共産党員、だった。当時、民衆の先頭に立つ人間はそういう人たちだったのか。
 日本軍は、牛の皮を剥ぐ仕事をしている人間に、見せしめにその二人の頭の皮をはぐように命令する。
 莫言は、残酷なシーンを平気でそのまま書く。「白檀の刑」という小説などは残酷の極みだ。しかしそれらは皆事実だったということだ。残酷な事をするのは日本軍だけではなかったであろうが、この物語は日本の侵略軍が残酷な悪者だ。大衆の面前でそういう刑を執行され、苦労人の酒蔵の女主人の仕切りで、酒蔵の労働者たちは翌日、日本軍に復讐の攻撃をする。もとより犠牲が出るのは覚悟の行動だ。
 結果は日本軍の軍用トラック1台を仕留めたものの、生き残ったのは9歳になった息子と、そのオヤジだけ。
 莫言の小説は、残酷なシーンと、とぼけたような冗談が特徴だ。冗談と思わなくては、生きてゆけない程のあまりの辛さ、悲しみ。所詮人生は冗談みたいなものよ。という哀しみと、庶民の生きざまを冗談のように面白く語ることで、その哀しみを笑い飛ばしてしまおうというかのようである。