天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

中国映画「再会の食卓」

 題のとおり、映像の中で食事の場面が多かった。上手いタイトルをつけたものだと思うが、原題は「團圆」英語訳はApart Togetherとなる。舞台は上海。状況だけ見れば台湾からの帰国訪問者との食事。
 1949年当時、国民党が台湾に向けて出発するとき、家族が別れ別れになった人達がいた。国民党軍兵士だった男が幼子を持つ妻を残して台湾へ行き、以来40年音信不通となっていた。男は台湾で結婚し、その台湾の妻と死別したのを契機に、元兵士に帰国訪問の機会が与えられることになったのを捉えての上海訪問だった。
 残った妻も、上海で別の男と結婚して家族を持っていた。長男は台湾に行った男の子どもだった。結婚した相手は共産党軍の兵士だったが、国民党の兵士の妻が幼子を抱えて暮らすのもままならないのが不憫で結婚したのだった。しかし、もと国民党の妻を持つことで共産党での出世はできず、上海で働きながら家族を養ってきたのだった。
 台湾からの来訪者を家族で受け入れるが、「台湾妻が死んだからといって、今頃のこのこ上海に戻ってきて昔の恋女房を連れて帰ろうなんて迷惑な話だ」とズバリ二女が行ってのける。しかし父は、「お母さんの気持ちを尊重して好きなようにさせろ」とどこまでも優しい。
 妻は、もう子どもたちも育ったし台湾へ行く道を一旦は選択した。しかし、離婚手続きに役所に行ったところ、結婚証明がないと離婚もできないことが分かった。戦後の混乱の中で結婚したので、そういうものは無い。あらためて結婚証明を取ることまで行うが、今度は離婚するには財産分与をしなくてはならない。が、ちょうど上海の古い下町の民家を壊して新しい高層住宅に住み替える計画中だったので、資産の特定もできない状態だった。
 その後、台湾男の滞在中、共にする食事の際に、上海の夫は酒に酔った勢いでつい本音を話す。即ち、国民党の子連れ妻を守って家族を養ってきたことで、文革の時などどんなに苦労したか。愛情がなければそんなことができるはずもないと。興奮した彼は軽い脳こうそくを起こしてしまう。
 離婚手続きも出来ず、夫の本音を聞くと妻は台湾へ行くべきではないと悟り、断念する。お騒がせな訪問者だったわけだ。
 ラストシーンは、それから1年後。高層住宅に引っ越した上海の老夫婦。末娘と暮らしているが、場所が上海の郊外でもあり下町に暮らした頃のように家族が集まらないのをかこっている。
 それにしても、40年前の相手と老いてなお共に暮らそうというのはなかなか。と思っていたら、映画の帰りに電車で読んでいた森鷗外の短編小説「じいさんばあさん」というのは、37年間訳有って離れて暮らしていた老夫婦が37年ぶりに仲良く暮らし始めるという話だった。
 実際には。その逆が多いのでは。40年近く共に暮らした夫婦が夫の定年退職を機に離婚する。子育てが終わり、仕事も引退すると残りの時間を自分に正直に生きたいということか。その結果が離婚だったり、再会だったり。
 男女間の出来事は年齢に関係なく、いつでも起きるということか。心しておかなくては。
*写真は、会報からの転写