天天日記

中国好きのまっちゃんで、書いていたはてなダイアリーを引き継いでいます。

MAO The Unknown Story

 掲題は「マオ 誰も知らなかった毛沢東」という本の原文タイトル。中国人のユン・チアンさんと夫のジョン・ハリディ氏の共著。ユン・チアンさんは、世界的ベストセラーとなった「ワイルド・スワン」の著者。
 ワイルド・スワンもなかなかの本だったが、こちらは別の意味でスゴイ。小説というのでは勿論ない。伝記かというと恐らく違う。伝記というのは、通常その人の業績や人となりを世に知らしめ、人が生きるための参考になるような読み物だ。事実は小説より奇なりということで、波乱万丈の生涯を送った人のことを書いて、読み物として面白いこともある。
 この本は、なんというか記録文とでもいうものだろう。480人へのインタビューと膨大な文献を調べ、事実を述べたものだ。その事実とは、毛沢東の実態のことだ。今や世界第二位の大国と言える国が、毛の支配した頃がいかに悲惨であったかということが、インタビューと調査によって記録されているのだ。
 上巻と下巻に分かれて、膨大な記録文章で、途中で読むのが嫌になる。なので、読み終わるのにたっぷり時間がかかった。いやになる理由は、単に長いと言うことではない。毛沢東のあまりのえげつなさが嫌になり、読み進む気も失せるほどだ。世に知られる中国国内の出来ごとといえば、大躍進と文化大革命。これは、毛の覇権主義と権力維持のために、人民の生命をなんとも思わないで犠牲にした出来ごとだ。その他、多くの優秀な中国共産党首脳部、即ち毛の協力者を自分の地位を危うくする者として、粛清していった。周恩来の癌の治療をさせないで、その命を縮めたのも毛だ。この本によると、そのようにして、戦争などによらず犠牲にした人民の命は7000万人に及ぶという。
 この本は、とても中国で売れるものではない。著者は英国人の夫と共にイギリスに住んでいる。あまりの毛批判により、暗殺されたという先輩がいたが、そうかもしれないと思うほどの暴露本とも言える。著者はネットで見る限り今も英国で高校教師をしているはず。
 毛沢東のことを書いた本は多い。私が読んだものでは、産経新聞取材による「毛沢東秘録 上下」がある。これも冷静に事実を取材した本だったが、内情取材については「マオ 上・下」に及ばない。
 古い本で「毛沢東の青春」というのを、3年ほど前に古本屋で見つけて読んだことがある。こちらは毛沢東礼賛本だった。原作はシャオ・ユーという毛の昔を知る人物で、訳者高橋正氏のまえがきが書かれたのが1976年2月とある。毛が死んだのが1976年9月9日なので、この本は毛の生前に(かなりよれよれになっていたはず)書かれた貴重なものだ。そのせいか、ネットで調べるとこの本は1万1千円を超える値段がついている。ゲロゲロ。知らずに買った300円の古本。あまり綺麗ではないので、それほど高くは売れないかもしれない。
 それにしても、いまだに天安門毛沢東の写真が飾られている。あれが外されるのはいつだろうか。アメリカ、ワシントンにあるリンカーン象とはわけが違う。あちらは、アメリカが存続する限りあそこにあると思うが、独立後自らの権力維持の為に長きにわたって恐怖政治をした独裁者がいつまでも飾られるとは思えない。今年は辛亥革命から100年の年であり、これを記念してあっさり外したら如何なものだろうか。
 今日は、中国の人にとっては少しきつい内容だったかもしれない。が、これも現存する本の紹介です。